祭りは生活の一部 最後のさんさに懸ける夏

奈良美里
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 「サッコラー、チョイワヤッセー」

 毎年8月1日から4日間、盛岡市の中央通りに太鼓の音とかけ声が響く。「世界一の太鼓パレード」といわれ、約250団体が出場し、150万人余りの観客が集まる盛岡さんさ踊りだが、その打音はこの2年間響いていない。

 ピンク色の浴衣をまとう「岩手県立大学さんさ踊り実行委員会」は、毎年のように最優秀賞に選ばれる強豪サークルだ。本番は「実員」と呼ばれるサークル員と、一般参加の学生や教職員と合わせ100人規模の大所帯で参加する。

 昨夏は新型コロナウイルスの感染拡大を受け、パレードが中止に。1978年に祭りが現在の形で始まって以来のことだった。

 そして今春、一時は観客を県内在住者に限定し、規模を縮小して開催する方針が決まった。しかし、感染者数がじわじわと増加し、6月末に2年連続の中止が決まった。

 3年生にとって最後の夏。「途中まであると思っていたのに、中止になったからなおさら」。太鼓のパートリーダーを務めていた海和(かいわ)将太さん(21)は悔しさをにじませる。

 山形県出身で、大学に入ってから県立大のさんさに触れた。その振り付けの格好良さにひかれ、このサークルを選んだ。

 パレードがなくなったこの2年間、児童館や介護施設を回った。今年6月には、紫波町の日詰商店街で披露し、集まった多くの人とともに踊った。

 さんさを披露すると、行く先々で「ありがとう」と声をかけられ、見る人は笑顔になった。コロナ禍で家にこもることが求められ、人間関係が希薄になるなか、祭りには「人と人の縁を結ぶ」力があることを痛感した。

 笛のパートリーダーを務める2年生の五郎丸千尋さん(20)は、中学生のころにテレビの中継で見た県立大生の美しく、しなやかな踊りに魅せられ、サークルに入った。

 県立大のさんさは、踊りや笛、太鼓のリズムが速く振りがコンパクトな「伝統さんさ」と異なり、すべてのパートで振りが大きいのが特徴だ。「練習はきつい。でも、もっとやりたいから時間が足りない」と言うほどのめり込む。

 地元の軽米町では過疎化が進むが、祭りの日は人が集まり、活気であふれるという。「年に何度かの少ない機会だから、集う人の結びつきは強まり、元気が生み出されている」と考えている。

 「祭りは生活の一部で、なくてはならないもの」。そんな思いが伝わるよう、五郎丸さんは来夏、最初で最後になる本番の舞台で、さんさを踊るつもりだ。(奈良美里)