平野啓一郎さんが考える日本の弱点 現実の理不尽に目をつむるな

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根本晃、編集委員・谷津憲郎
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 社会のあり方がめまぐるしく移り変わる現代。一寸先を予測するのも困難な時代を生きる私たちにとって、未来はどこか遠い存在かもしれません。そんな中、2040年代の日本を描いた最新作「本心」をはじめ、未来を小説の題材にしてきた作家の平野啓一郎さんは、「過去と現在の関係で物事を捉えるのではなく、理想の未来のために今何をすべきか考える必要がある」と言います。どういうことでしょうか。

 ――未来を舞台にした小説を書くのは、なぜでしょうか。

 未来から現在を考えないと、この停滞感から抜け出せないという思いがあるからです。

 僕はいわゆるロスジェネ世代ですが、財政や社会保障の危機感から、老後、「いつまで生きるのか」という問いを、社会からのプレッシャーによって内面化させられる懸念を抱いています。この世代は、10代のころは好景気を経験していて、当時の未来像とのギャップを生きています。しかし、更に下の世代は、ずっと停滞した日本を生き、現実とどうにか折り合いをつけている。結果、いずれにしても、長く生きるということに肯定的なイメージを持てなくなっています。

ひらの・けいいちろう 1975年、愛知県生まれ。北九州市出身。京都大在学中の99年に「日蝕(にっしょく)」で芥川賞受賞。2009年、未来の米国を舞台にした長編「ドーン」でBunkamuraドゥマゴ文学賞。16年、「マチネの終わりに」がベストセラーに。最新作の長編小説「本心」は19~20年に新聞連載され、21年5月に単行本化された。

 ――どうすれば、そのような社会を変えていけると思いますか。

 一つには、過去と現在の因果関係でばかり物事を考えないということです。新しいアイデアを出しても、出来ない理由が100個も200個も返ってくる。「元々こういう事情なのだから」と。

 そうではなく、未来がどうなるか、どうあるべきかから、いま何をすべきかと考える必要があります。

 《小説「本心」の舞台は、仮想現実(VR)のテクノロジーが進んだ40年代の日本。主人公の青年は、亡き母のメールや写真をAIに学習させ、VR空間にVF(ヴァーチャル・フィギュア)として母を再現させる》

 ――未来の社会では、バーチャル空間の果たす役割がますます大きくなりそうです。

 当初は、「本心」でバーチャ…

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