自治体や企業が「推し」を応援 新生アイドルfishbowl

魚住あかり
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 自治体や企業がアイドルグループの応援を通じて、地域を盛り上げる活動が注目されている。特徴的なのは、ひいきの「推しメン」を集中的に応援するスタイル。ライバル意識もくすぐり、思わぬ効果を生み出している。

 新たな応援の形を実践しているのは、今年6月にデビューしたアイドルグループ「fishbowl(フィッシュボウル)」。「静岡県を愛し、愛されるアイドル」をめざして誕生した6人組は全員が県内在住。静岡市清水区出身で人気アイドルの楽曲も手がける作詞家ヤマモトショウさんがプロデュースするなど、地域性を前面に出している。

 「推しメン」を応援するスタイルは、県人団体「Proof of Shizuoka」の伊藤佑介さん(44)が考案した。アイドルファンの間ではすっかり定着している「推し」。自らが推すメンバー「推しメン」の魅力をSNS上で語り合い、時に競い合う文化を、企業や自治体に広げたいと考えた。

 企業や自治体が応援を申し出ると、所在地に出身地の近いメンバーが割り振られる。企業はイベントの出演依頼をしたり、SNSでイベントや新曲を告知したりして「推しメン」をサポート。メンバーは配信ライブなどで、応援してくれる企業や自治体をPRする。応援のギブ&テイクには、基本的に金銭のやりとりは発生しない。

 東西に広く、地域間にライバル意識もある県民性も「推し文化」にはまった。西部在住メンバーと応援企業がライブ配信すると、これに負けじと東部企業も推しメンとコラボ配信。県中部にライブイベントが集中していると見るや、東部企業が御殿場市での主催イベントに出演依頼した。

 これまでに静岡市など4自治体と29の企業が参加し、応援の幅を広げている。伊藤さんは、「自分の推しを応援したり、競ったりすることが、実は地域を推していることにつながっている」と手応えを感じている。

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 「湖西市様からいただきました」

 浜松市出身のメンバー、大白桃子さん(18)は、ライブ配信で、応援を受ける湖西市から贈られたどら焼きをほおばった。同市の老舗和菓子店の看板商品は市の名所と共に紹介され、買い求めるファンも現れた。

 影山剛士市長は、応援自治体に名乗りを上げた理由を「知らない場所に人は来ない。まずはファンの人に市を知ってもらいたかった」と説明する。

 一方で、これまでも「ふるさと大使」がコンサートやイベントで市をPRしてきた。新たな応援スタイルで何ができるのか、双方が手探りの状況だという。

 「推しメンを直接応援する企業があるのは、ファンにとってうれしい」

 静岡市葵区の老舗洋菓子店「ショコラファン」の代表で、グループの大ファンでもある中川雄太さん(37)は話す。店は今年9月に、静岡市出身の新間いずみさん(20)の応援企業になった。

 元々グループにちなんだゼリーを開発するなど、「非公式」に応援してきた。応援企業となってからもメンバーの誕生日限定商品を販売するなど積極的に活動している。

 応援企業・自治体の取り組みは広がっていくのか。中川さんは「自分はオタクだからできている部分はある」と話す。応援企業就任の条件は、配信の協力やロゴマーク提供など最小限な分、積極的に活動する企業はまだ少ない。中川さんは、「動きがなければ、ファンの興味も失われてしまう」と懸念する。

 それでも期待は大きい。「協力する店が増えれば、ファンが訪れる場所も増える。新間さんの応援企業欄に、地元のお店がめっちゃ並んでいたらおもしろいですよね」と中川さん。今後も市内の店に声をかけ、「推しメン」の応援に力を入れていくつもりだ。(魚住あかり)