連載「それでも、あなたを」イスラエル・パレスチナ編①
エルサレムの中心部を見渡す高台に、緑豊かな公園に囲まれ、石造りのイスラエルの最高裁判所が立つ。
2006年、30歳のユダヤ人弁護士サリ・バシは、あるパレスチナ人男性の代理人として最高裁に挑んでいた。
名前はオサマ。サリの8歳年上だ。
典型的なイスラム教徒の名前。長いひげを生やした、熱心なイスラム教徒なんだろうな。はじめに書類を見たサリは、なんとなくそう思った。
オサマはパレスチナ自治区ガザ地区の難民キャンプで生まれた。大学進学のため、20年ほど前に、ガザ地区から約100キロ離れたパレスチナ自治区のヨルダン川西岸地区の中心都市ラマラに移り住んでいた。
オサマは研究者を目指し、ロンドンかイスラエルで博士課程に進むことを希望していたが、イスラエルはオサマの移住を認めなかった。
イスラエルの判断の背景には、イスラエルとパレスチナの対立と、ガザ地区出身者への強い警戒感がある。
ガザ地区は、近年両者が最も激しく衝突してきた場所だ。2006年も、イスラエル軍はガザ地区に侵攻した一方、パレスチナの内部抗争も激化。銃撃に巻き込まれ、多くの人が亡くなった。
連載「それでも、あなたを 愛は壁を超える」
民族、国家体制、偏見…。世界には、人と人とのつながりを阻む様々な「壁」があります。それでも出会い、固い絆で結ばれた2人がいます。壁を超える愛の物語をつむぎ、背後にある国際問題のリアルを伝えます。
このためイスラエルは、「安…