光や音が調節可能 筑波大が発達障害などの学生向けに部屋を設置
【茨城】発達障害などで聴覚や視覚が過敏な学生のための学習・休憩スペースを筑波大が新たに設置した。室内の光や音、色を自在に変えることができ、学生からは「心が落ち着く」など効果を実感する声が届いているという。
同大には学生と大学院生合わせて約1万6500人が在籍する。大学に登録している障害のある人は、12月1日時点で約0・9%の156人。そのうち発達障害や精神障害のある人は110人いる。教室での人の声やマイクの音、蛍光灯の光を不快に感じる人が少なくないという。
障害科学を研究する同大人間系の佐々木銀河准教授と、デザインを専門にする同大芸術系の小山慎一教授を中心に、2年前から準備を進め、今年7月、共同で利用できる学習室と、個人の感覚に合わせて室内環境を調整できる個室からなる「アクセシブルスタディルーム」が完成した。
個室は約20平方メートル。設計の過程で、多様な障害を抱える人の意見を採り入れた。海外の類似施設にならい、壁面を青く塗ろうと3、4人に提案すると、青を好む人もいれば「寒々しい」と抵抗感を示す人も。個々の感覚を反映できるよう、色彩や光の加減を微妙に調節できる間接照明を導入。壁面も、まぶしさを感じさせない加工を施した。 自身の障害を周囲に知られたくないため、書店や図書館で関連の書籍を手に取れない人もいる。個室で読めるように専門書を本棚に並べたが、本が視界に入ると気が散って勉強できないという人もいるため、カーテンで覆えるようにした。
備品にも配慮した。包まれるような狭い場所を心地よく感じる人もいる。クッションや机のほか、室内で利用できる簡易テントも置いた。水中の泡を眺めてリラックス効果を得られる「バブルチューブ」などのグッズも設置した。
8月から聴覚障害者の1人を含め16人が利用している。事前申請が必要で、利用時間は最大約3時間。授業の合間の休憩や、オンライン授業の受講に活用されている。
佐々木准教授は「障害のある学生が様々な環境を試し、自分が快適と感じる環境を把握するきっかけになれば。将来的には身体障害者を含め、様々な学生が好みに応じて安らげる場所にしたい」と話している。(鹿野幹男)
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