教員不足、全国で2065人 管理職が担任務める例も 文科省調査

桑原紀彦
[PR]

 教員が足りず、学校に本来配置するはずの人数を満たせない状態が今年度、全国の公立小中学校、高校、特別支援学校の4・8%にあたる1591校で生じていることが、文部科学省の調査で分かった。不足は昨年5月1日時点で2065人に上り、小学校の担任を管理職が代理で務める事態も起きている。休業・休職者の増加や、教員志望者の減少が背景にある。文科省は全国の教育委員会に計画的な採用を促す方針だ。

 都道府県教育委員会などが配置を計画する教員の人数に対し、休業・休職した正規教員に代わるフルタイムの臨時的任用教員(臨任)や、非常勤講師らを雇っても足りない状態が近年問題視され、文科省が初めて実態を調査。各都道府県と政令指定市の計67教委などに、始業日と5月1日時点の不足状況を尋ね、31日に公表した。

 小学校は5月1日時点で全体の4・2%にあたる794校で979人が不足。このうち学級担任は367校で474人が足りず、代わりに校長・副校長・教頭が53人、担任を持たない予定の教務主任ら205人が担任を受け持っていた。中学校では6・0%の556校で722人が不足。5月1日時点で教科担任が足りず、必要な授業ができない学校が16校あった。他の教科の授業を行うなどしていたが、文科省によると講師が見つかるなどし、その後解消したという。

 都道府県教委別にみると、小学校で不足数が最も多かったのは千葉県の91人、中学校は福岡県の59人だった。いずれも首都圏や愛知県関西圏、九州北部で不足が目立つ。

 不足の原因について、産休・育休・病休取得者が見込みより増えたことや、特別支援学級数の増加のほか、教員採用試験が低倍率で合格しやすくなり、主に不合格者が担ってきた臨任や非常勤講師が減ったことを挙げる教委が目立った。この日公表された今年度の公立校教員採用試験の結果は、受験者の減少などで小学校の採用倍率が2・6倍と3年連続で過去最低に。中学校は4・4倍で1991年度(4・2倍)に次ぐ2番目の低水準だった。

 文科省は、退職者数に合わせて正規教員を大量採用し、臨任などからの補充のやりくりが難しくなった教委もあることから、複数年単位で計画的に採用したり、臨任や講師のなり手を増やしたりする取り組みを紹介するなどし、なり手確保につなげたい考えだ。(桑原紀彦)

教員の不足数と、不足が生じている学校の割合

    小学校            中学校

    不足数(人) 学校割合(%) 不足数(人) 学校割合(%)

北海道     18     1.7     18     1.7

青森県     13     4.2      4     2.0

岩手県      1     0.3      0       0

宮城県     19     5.7      8     5.3

秋田県      2     1.1      0       0

山形県      0       0      0       0

福島県     52    12.2     22     8.3

茨城県     58    12.1     55    24.0

栃木県     22     5.7      7     3.9

群馬県      0       0      1     0.6

埼玉県     67     8.1     40    11.2

千葉県     91    13.0     33     9.9

東京都      0       0      0       0

神奈川県    45     4.3     27     6.8

新潟県      0       0      0       0

富山県     10     5.6      4     5.1

石川県      1     0.5      1     1.2

福井県      7     3.8      7     9.2

山梨県      1     0.6      0       0

長野県      2     0.6      1     0.5

岐阜県      9     2.5      7     3.9

静岡県     10     3.2     10     5.9

愛知県     57     3.7     50    10.0

三重県      6     1.5      7     4.6

滋賀県      5     2.3      6     6.1

京都府     14     6.1      6     2.1

大阪府     60     8.9     50    13.3

兵庫県     22     2.3     57    12.4

奈良県      8     1.6     11     6.9

和歌山県     0       0      0       0

鳥取県     19     9.1      5     1.9

島根県     42     6.5     12     4.3

岡山県      1     0.3      1     0.9

広島県      4       0      4       0

山口県      0       0      6     4.3

徳島県      2     1.2      1     1.2

香川県      8     3.9      1       0

愛媛県     15     5.5      3     2.3

高知県      3     1.6      0       0

福岡県     69    13.8     59    20.0

佐賀県      8     5.0     12    11.1

長崎県     41    12.9     38    22.6

熊本県     36    14.5     42    23.1

大分県     15     6.0     17    12.5

宮崎県      4     0.9      2     0.8

鹿児島県    19     3.4     10     4.2

沖縄県      6     2.3      7     5.0

札幌市     24    11.1      3     1.0

仙台市      5     4.2      9    13.6

さいたま市    0       0      1     1.7

千葉市      0       0      0       0

横浜市     12     3.5      1     0.7

川崎市      4     3.5      2     3.8

相模原市    10    14.1      4     8.6

新潟市      1     0.9      3     3.4

静岡市      4     4.8      0       0

浜松市      1     1.0      2     4.1

名古屋市     0       0      0       0

京都市      3     1.9      7     9.7

大阪市      0       0      0       0

堺市       9     3.3      5     7.0

神戸市      2     1.2      0       0

岡山市      1       0      1     2.6

広島市      3     2.1      1     1.6

北九州市     3     2.3      0       0

福岡市      0       0     19    21.7

熊本市      2     2.2      5     9.5

豊能地区     3     4.3      7    21.2

(※)2021年5月1日時点。文科省調べ。フルタイムよりも短い時間で勤務する教員は「0.5人」など、勤務時間数に応じて換算。不足教員数を換算して1人に満たない場合は、学校数に計上していない。そのため、不足教員がいるのに学校数が0校というケースもある。

教員不足が生じている学校の割合(%)

      小学校   中学校

北海道   1.7   1.7

青森県   4.2   2.0

岩手県   0.3     0

宮城県   5.7   5.3

秋田県   1.1     0

山形県     0     0

福島県  12.2   8.3

茨城県  12.1  24.0

栃木県   5.7   3.9

群馬県     0   0.6

埼玉県   8.1  11.2

千葉県  13.0   9.9

東京都     0     0

神奈川県  4.3   6.8

新潟県     0     0

富山県   5.6   5.1

石川県   0.5   1.2

福井県   3.8   9.2

山梨県   0.6     0

長野県   0.6   0.5

岐阜県   2.5   3.9

静岡県   3.2   5.9

愛知県   3.7  10.0

三重県   1.5   4.6

滋賀県   2.3   6.1

京都府   6.1   2.1

大阪府   8.9  13.3

兵庫県   2.3  12.4

奈良県   1.6   6.9

和歌山県    0     0

鳥取県   9.1   1.9

島根県   6.5   4.3

岡山県   0.3   0.9

広島県     0     0

山口県     0   4.3

徳島県   1.2   1.2

香川県   3.9     0

愛媛県   5.5   2.3

高知県   1.6     0

福岡県  13.8  20.0

佐賀県   5.0  11.1

長崎県  12.9  22.6

熊本県  14.5  23.1

大分県   6.0  12.5

宮崎県   0.9   0.8

鹿児島県  3.4   4.2

沖縄県   2.3   5.0

札幌市  11.1   1.0

仙台市   4.2  13.6

さいたま市   0   1.7

千葉市     0     0

横浜市   3.5   0.7

川崎市   3.5   3.8

相模原市 14.1   8.6

新潟市   0.9   3.4

静岡市   4.8     0

浜松市   1.0   4.1

名古屋市    0     0

京都市   1.9   9.7

大阪市     0     0

堺市    3.3   7.0

神戸市   1.2     0

岡山市     0   2.6

広島市   2.1   1.6

北九州市  2.3     0

福岡市     0  21.7

熊本市   2.2   9.5

大阪・豊能地区  4.3  21.2

(※)2021年5月1日時点。文科省調べ

有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。

今すぐ登録(春トクキャンペーン中)ログインする

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません

春トク_2カ月間無料
  • commentatorHeader
    内田良
    (名古屋大学大学院教授=教育社会学)
    2022年1月31日21時4分 投稿
    【視点】

    教員個人単位では、予定されていた教員数に対する不足率は0.3%前後のようですが、まずもって、学級担任がいない、教科担任がいない、というのは授業が実施できないことであり、子供や学校にとっては重大事態です。 教育委員会や学校がさまざまなツテを