「インクの手触り、古くて新しい」 体験できる活版印刷所オープン

平山亜理
[PR]

 デジタル化が進むなか、あえて活版印刷の魅力を知ってもらおうと、自分で活版を使って印刷を体験出来る工房が山梨県甲府市の商店街にオープンした。若い人にも、足を運んでもらい、中心街にかつてのにぎわいを取り戻したいという。

 「オリオン活版印刷室」は、甲府市の中心街で長年空きビルだった場所を改修し、1月14日にオープンした。運営するのは創業70年の印刷会社オズ・プリンティング。デジタル化で、紙媒体の需要が減るなか、「紙だからこそ伝わるものがある」と考えた。

 廃業する印刷会社も多い中、郷愁を誘う活版に引かれる人たちも増えていることに目をつけた。最近は活版や使い切りカメラなど、古くて不便なものを「エモい」と喜ぶ若者も多いという。

 活版の文字(活字)は、廃業した岐阜の印刷会社に譲ってもらった。工房には、ドイツ製の活版印刷機もあり、ワークショップで、印刷機の使い方を見せたり、SNSでも発信したりしたいという。

一枚一枚、表情が違う

 活版印刷の体験コースは2種類。1時間のコースは予約が必要で、自分で活字を選んだり、レイアウトを考えたりする。料金は5500円で、25枚を刷って20枚を持ち帰れる。30分コースは1650円で予約は不要。10枚を刷り、8枚を持ち帰ることが出来る。

 活版印刷は、力加減によって、色の付き具合も変わる。社員の小沢美寿々さん(38)は、「黒いインクがボコボコする手触りは、古くて新しい。一枚一枚、表情が違うのも面白い」と話す。

 県産の西嶋和紙にも、印刷できる。ワインの絞りかすが入ったものやヒマワリの繊維が入ったもの、水晶の粉入りのものもあり地元ならではの味わいがある。県産ではないが、廃棄された古い札入りの和紙もある。捨ててもおかしくないものを再利用して使い、名刺に生まれ変わらせている。小沢さんは、「失われつつある活版印刷の技術を次世代につなぐ場所にし、人の流れを作って様々な文化があふれる街にしたい」と話している。

 営業時間は、午前10時半から午後6時まで。月曜、木曜日と祝日が休み。電話(055・234・5527)かLINEで予約。名刺などのフルオーダーメイドの注文を受け印刷もする。平山亜理