ミートショックで見えた供給網のもろさ 甘かった「食の安全保障」

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石山英明
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 新型コロナウイルスの感染拡大で、世界各地で工場が止まったり物流が滞ったりしました。その影響で、いろいろな食料品が値上がりしています。

 品薄で商品を買えない「ミートショック」「からあげショック」なども起きました。

 食料自給率の低い日本は今のままで大丈夫なのでしょうか。「農業消滅」「食の戦争」などの著書があり、農業政策に詳しい鈴木宣弘・東京大学大学院教授に聞きました。

すずき・のぶひろ 1958年生まれ。東京大学農学部卒業後、農林水産省に入省。九州大学大学院教授などを経て、2006年から東京大学大学院農学生命科学研究科教授。専門は農業経済学、国際経済学。著書に「農業消滅」「食の戦争」「WTOとアメリカ農業」など。

食料輸入止まれば「命の危険」

 ――コロナ禍は食の分野にどのような影響を及ぼしているでしょうか。

 日本の食料自給率は37%しかなく、食料の輸入が止まると我々は命の危険にさらされます。2020年4月の段階で、ロシアやベトナムなど十数カ国が輸出を規制しました。2008年の食料危機のときもそうでしたが、穀物を中心に、いとも簡単に輸出規制が起きると再認識させられました。

 「輸出規制を規制すればいい」というのは能天気な考えで、緊急時に自国民をほったらかして他国に食料を供給するでしょうか。また、食料の確保は国家の最も基本的な責務なので、規制したからといって他国に文句を言われる筋合いのものでもありません。

高い海外依存度

 ――日本の食料自給率は37%ですが、国内で食料をつくるための種や飼料用の穀物も海外に頼っていることを考えると、海外依存度はもっと高いですね。

 そうです。それで今回、コロナ禍によって日本の抱える問題点が広範囲に顕在化しました。たとえば、自給率が80%程度とされる野菜は、種の9割を海外に依存しています。種のことまで考えると、自給率は8%ということです。

 結果的には大丈夫でしたが、一時、種が日本に入ってこなくなるのではとの不安がものすごく広がりました。飼料用穀物も同様です。

 また、日本の農業は技能実習生の労働力にかなり依存しています。コロナで技能実習生が入国できなくなったため、長野のある農家は秋の収穫のめどがつかず、作付けを半分に減らしました。千葉の酪農家は、夫婦2人と技能実習生1人でやっていたのが、技能実習生がいなくなって廃業しました。小規模の家族経営にまでコロナ禍の影響が出ています。

「この程度で済んだから大丈夫?」

 ――ただ、食料がまったく入ってこないような最悪の事態は起きていません。なぜでしょうか。

 感染状況が改善したり悪化したりを繰り返し、ずっとダメだったわけではなかったのと、企業が物流を止めないためにかなりの工夫をして、それが機能したということでしょう。

 ですが、危険な綱渡りだったとも、たまたまラッキーだったとも言えます。『この程度ですんだから大丈夫だ』ですませてはいけません。

 ――今後は今回とは違って、何とかならない可能性が高いということですか。

 世界で食料の需要は確実に増えています。一方で、『異常気象』は、もはや『通常気象』。大洪水や大干ばつが起き、供給が不安定になっています。

 また、食料の生産国はアメリカの戦略もあって一部に集中するようになっています。何らかの感染症もまた大流行するでしょう。

 さらに、中国の存在です。肉、魚、穀物、乳製品などの需要と購買力が非常に高まっていて、今後さらに伸びます。他のアジアもアフリカも需要増加が続きます。食の供給が不安定になる中で需要は伸びる。海外依存度の高い日本は、コロナ禍よりもっとひどいことが起きた場合、他国に買い負けたり、お金を出しても買えなかったりする事態になりかねません。

「我々はある意味、学校給食で洗脳される」「食の『量の安全保障』が崩壊しているがゆえに、食の『質の安全保障』についても文句が言えない」「何かを痛めつけることで安く生産している」…。後半でも食のあり方を鋭く批判し、消費者が行動を変えるよう訴えています。

当面は自給率50%を目標に

 ――食料自給率を高めることが解になるのでしょうか。

 食料自給率100%はすぐに…

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