米を「削る」価値観から抜け出したい 2年連続、最優秀賞の純米酒

角津栄一
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 日本酒の出来栄えを競う「第92回関東信越国税局酒類鑑評会」で、牧野酒造(群馬県高崎市)が純米酒の部で2年連続となる最優秀賞を獲得した。杜氏(とうじ)を務めるのは同社専務の牧野顕二郎さん(43)。「米を削る」傾向が強い日本酒業界の中で、あえて「削る」価値観からの脱却をめざした酒造りを続けている。

 元禄3(1690)年創業の同社は、銘柄「大盃」が全国新酒鑑評会や国税局鑑評会で上位入賞二十数回の実績を誇る。18代目となる牧野さんは、東京農業大を卒業後、静岡県の蔵元で酒造りを学び、24歳で実家に戻った。

 2019年に杜氏の重責を担うようになり、その年に仕込んだ純米酒が20年度の関東信越国税局酒類鑑評会で最優秀賞に選ばれた。出品したのは、酒蔵数が全国1位の新潟や、長野、群馬、栃木、埼玉、茨城の6県。その前年は、最優秀賞に次ぐ特別賞だったことから、「もう少しで届かなかった。最優秀賞の酒を利き酒して、自分のところに足りないものは何かを分析し、修正を加えた結果だと思う」と、牧野さんは当時を振り返る。

 酒の出来具合は、年によって異なる。20年の受賞酒は、穏やかな香りのソフトで濃醇(のうじゅん)なタイプだったが、21年は華やかな香りの軽快なタイプだったという。「酒造りでは麴(こうじ)と、米の洗い方が重要。技術は日々進化をしていて、世の中が求める志向も変化している。失敗を恐れずいろいろチャレンジしてきました」

杜氏「人と違うことをやりたい」

 いま、めざしているのは、「削る」価値観からの脱却だ。「いまの日本酒業界では、地酒の蔵元の主戦力とする酒は、米の削りが50%から60%(精米歩合50%から40%)が多い」とし、「個性がなく、多様性に欠けている」と感じる。「米を過剰に削っている。削らなくてもおいしい酒はできる」と指摘する。

 精米すればするほど、米本来の姿から離れているのではないかと感じ、4、5年前から削りを20%(同80%)にとどめる取り組みを始めている。目指しているのは、削る割合が10%~30%(同90%~70%)の酒を主力にすることだ。「日本酒も多様性が試される時代。人と違うことをやりたい」と話す。

 ただ米の外側には、たんぱく質や脂質などの栄養分が多く含まれ、外側の部分を多く残すと発酵が早まるため、それに対応した酒造りの技術が必要となる。

 「出荷製品全体から見ればいまは割合は少ないが、地酒専門店からの反応は良い」と、自らの挑戦に自信と手応えを感じている。(角津栄一)