長野県が五輪選手育成プロジェクト「メダリスト輩出を」

高億翔
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 長野冬季五輪から24年。夢の舞台をめざす熱は、今も脈々とNAGANOに息づいている。2009年に始まった、冬季五輪のメダリスト育成を目的とした「SWANプロジェクト」。将来的に長野県内を拠点に競技を続けてほしいという願いから県外からの受講生も受け入れており、今も日本のウィンタースポーツをリードする五輪開催地の自負がのぞく。

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 昨年11月16日の夜、かつて五輪のフィギュアスケートスピードスケート(ショートトラック)の会場となったホワイトリング(長野市)に、30人ほどの小中学生が集まった。プロジェクトの受講生だ。コロナ下でリモートでの受講が続いていたため、実際に会場に集まるのは久々だった。

 柔軟体操の後に始まったのが片足でのスクワット。「片足で体重をいかにコントロールできるかが大事。左右差を知ってもらいたい」と指導するフィジカルトレーナーが狙いを語った。

 プロジェクトの対象は小学4年生から中学3年生。秋に複数回の体力テストや面接などを経て受講生を選考するが、ユニークなのは募集ではウィンタースポーツの経験を不問としている点だ。間口を広げて才能の発掘をめざしている。

 体のどこを伸ばせば柔軟性が増すのか、負荷をかけると体のどこが痛むのか――。地道な身体作りとともに、「考えて」という受講生への呼びかけが多いのも特徴。プロジェクトの事務局を務める県スポーツ課の指導主事、赤羽康隆は「指導を繰り返して、身体作りに関する知識を小さい頃から植え付けていきたい」と話す。

 プロジェクトは、月3回程度の実地指導で身体作りやその使い方を教え、さらにトレーナーによる体力作りの指導から心構え、栄養学、スポーツ医学と幅広く教える。

 受講生は今、64人。修了生105人の中からは、20年から21年にかけてのシーズンだけでも、フリースタイルスキーのモーグルとデュアルモーグルでワールドカップに出場した冨高日向子(21)やスロープスタイルの近藤心音(18)をはじめ、国体や高校の全国大会で優勝する選手も出た。県スポーツ協会の主事で、プロジェクトにスタッフとして関わる新井優貴は「年代や発育に応じたメニューで、走り方や歩き方、体の軸の使い方が学べるようになっている。大舞台で受講生が活躍するのはうれしい」と手応えを語った。

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 東京から参加する受講生もいる。村岡大輔(14)は東京都東久留米市から通い、スノーボードクロスでトップ選手を目指している。

 送迎をして支えている母親の早智(48)は「都内にこうしたプログラムがないため、子どもにチャンスがあれば」と応募したという。「けがをしていても、別メニューでトレーニングできていて手厚い。目標が同じなので、子どもも切磋琢磨(せっさたくま)できると思う」と話す。

 長野県塩尻市から通う川口祐太朗(14)は、アルペンスキーでいずれは五輪やワールドカップの舞台に立ちたいという夢を抱いている。「1人でトレーニングするよりも競い合うと成果が出る気がする。柔軟性を良くするためのトレーニング方法を知ることができた」と話した。

 県スポーツ課の赤羽は言う。「プロジェクト初期に育成した修了生が活躍してきている。いずれは五輪でメダリストが出れば」

 県スポーツ課によると、1984年のサラエボ大会(ユーゴスラビア)から4年前の平昌大会(韓国)までの冬季五輪10大会で、県出身の出場選手は延べ122人を数える。NAGANOから世界へ、五輪へ。夢は確かに受け継がれている。=敬称略(高億翔)