昔ながらの京町家、ディープな「会館」に 軒を連ねる小さな酒場

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富永鈴香
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古都ぶら

 会館と聞くと、かしこまった雰囲気の建物が思い浮かぶ。古都では必ずしもそうではない。京都市中心部に点在する会館を「はしご」して知った。(富永鈴香)

 オフィスや百貨店が輝きを放つ四条通から、富小路通を北へ入ってすぐのところに、ちょっと薄暗い「四富(よんとみ)会館」がある。

 2階建てで、間口は5メートルもない。1階の中央部分には奥まで続く長い通路が1本。その両脇に13の店が並んでいる。

 会館といっても、集会や会合を開くような場所ではない。こぢんまりした居酒屋が軒を連ねる雑居ビルのような外観だ。

 入り口にある「たすく」の引き戸を開けると、すぐ目の前に白木のカウンター。席に着くと、背中が戸に触れそうだ。

 一見(いちげん)さんお断りかな……。たじろぐ筆者に店主の池西祐佳さん(53)が笑顔で話しかけてくれた。「スパークリングでシュワシュワっといかがですか」

 店には池西さんが全国100以上のワイナリーで集めた日本ワインが置かれている。動物性の食材を使っていない料理も。「体に負担のない料理で穏やかに酔える日にしてほしい」

店主もかつて「何じゃここは」

 池西さんも元は四富会館の客。会社員だった25年ほど前に上司に連れてきてもらい、「何じゃここは」と驚いた。その後、会社勤めをやめて飲食業へ転身。「頭の端にあった」という四富会館を選んで2008年に開店したという。

 そんな話をほかのお客さんを交えて話していると、すっかり居心地がよくなっていた。

 「扉を開けると店それぞれにコンセプトがあり、客層が違う。はしごも楽しいと思いますよ」。池西さんに背中を押され、会館内を回ってみた。

 「琥珀(こはく)」は薩摩焼酎バー。日替わりのカレーも名物だ。鹿児島県出身の店主の神橋(かんばし)里美さんは進学を機に京都で住み始め、大手企業などでの勤務を経て、今はフリーライターの仕事と二足のわらじで「人をつなぐ」をコンセプトに店を開けている。神橋さんとの会話を楽しみに、ほぼ毎日通う常連もいる。「店主とお客さんの距離が近い。四富はそれが良さやね」と神橋さん。

 「毎日違うお客さんが来るから色々な化学反応が起こる。ちょっとしたきっかけでビジネスや友情、恋愛に発展する。私自身も気づきがあって楽しいです」

世界の紙幣が並ぶ店も

 和食処「てしま」は、厨房(ちゅうぼう)の壁に世界中の紙幣が貼られていた。客がくれたお札を貼ったところ、他の客も記念に置いていくようになったという。「おいしいものを食べたら明るくなる。明るい人には明るい人が集まる。だから食って面白い」。香川県豊島(てしま)出身の店主、高田気了敏(きよとし)さん(68)の言葉がしみる。

 四富会館ができたのは1959年。大家の塚本善久さん(51)によると、明治創業の砂糖問屋を模様替えして、法律の規制で出店できなくなった屋台の受け皿になったという。

 それにしても、なぜ四富は「会館」なのだろう。

 京都の酒場に詳しい立命館大…

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