第35回受験を突破する「自分の機嫌の取り方」 教育系ユーチューバーの学び

聞き手・高浜行人
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受験する君へ 教育系ユーチューバー葉一さん

 群馬県立館林高校から現役で東京学芸大学に進みました。偏差値は一時、最大20以上の差があって本当に苦しみました。受験ってマラソンみたいに長くて継続的な努力が必要だし、努力しても全員受かるわけじゃない。つらいですけど、僕は本気で向き合ってよかったと振り返って思います。

 受験しようと決めたのは高2の秋ごろでした。それまで、勉強はするべきものだからやるという感じ。褒められるのは好きなので、定期テストの準備だけはまじめにやっていました。最初は音楽系の専門学校に行こうと思っていて、そのための内申点がとれていれば十分と考えていたんです。長期の休みはゲームばかりしていました。

〈はいち〉1985年、福岡県生まれ、群馬県在住。塾講師や教材販売会社の社員を経て、2012年からYouTubeチャンネル「とある男が授業をしてみた」(登録者数166万人)で授業動画を公開している。

 僕が恩師だと思っている数学の先生から「教師に向いている」と言われ、教員を目指すようになったんです。家庭の収入を考えると自宅から通える国公立大しか選択肢がなくて、これもその恩師の勧めで学芸大を志望校に決めました。自分で調べれば調べるほど魅力的で行きたい気持ちが強まりましたが、学力があまりにも足りない。本格的な受験勉強にとりかかりました。

 平日でも1日5時間、休日は10時間以上は勉強しましたね。まずは数学を重点的にやりました。自信をつけたくて、得意教科を伸ばそうと思ったんです。教材は一つに絞った方が良いと言われていたので、学校から配られたそんなに分厚くない問題集を、どこにどの問題があるか覚えるぐらい何周もやりこみました。

 次に苦手の英語にも手を広げました。週単位で単語を100語とか覚える量を決めて、文法や構文が載っている参考書をやりまくりました。国語は古文単語を覚えましたが、苦手意識が強くて面白さを見いだせなくてつらかった。だからというか、なかなか伸びなくてつらい思いをしました。地理も学校の問題集を何度もやりました。物理だけは配られた問題集がわかりにくくて、自分で1冊買ってやりました。

 勉強の場所はその時の気分によって変えていました。自宅でやることが多かったんですが、自分の部屋とかリビングとか移動していました。あとは近くの図書館や、高校のそばの自習スペースも使いました。自宅でやっていて気分が乗らないときは外に出て行くなど、うまく使い分けるようにしていました。

 効果的だったのは模試の復習です。毎月のように受けたんですが、最初は面倒くさくて解説も見ませんでした。でも、恩師に「模試の復習でレベルが上がるんだからやらないでどうする」と言われてやるようにしました。不正解だった問題はもちろん、正解だったものでも自分が考えていた根拠が解説と一致しているかどうかとか、全部すり合わせたんです。思った以上に伸び、志望校の判定もどんどん上がっていきました。

絶対大事なのは本番を迎える時のコンディション

 でも、入試の本番では失敗してしまいました。2月下旬の前期試験のとき、体調を崩してしまったんです。熱っぽくて頭が働かず、数学の最初の問題から基礎的な公式がまったく出てこない。頭の中でパンって音がして、何も考えられなくなりました。背中に滴り落ちる汗が冷たかったことは鮮明に覚えています。絶対に落ちたと確信しました。

 前期試験の前に受けた私立大学も、ほとんど落ちていました。あれだけやったのに、努力したことが出せなかったのが悔しかった。それからしばらく、机に向かっても吐き気がして、何も手につきませんでした。1週間ほどして不合格だったことがわかると、後期試験にベストコンディションで臨むには何をしたらいいか考えました。息抜きに漫画を読んだり、好きな音楽を聴いたり。勉強する内容も新しいことはやらずに、自分が覚えているかを確認するだけにしました。

 それまでは勉強量が全てだと思っていたんです。振り返れば当たり前なんですけど、本番を迎える時のコンディションの方が絶対大事なわけですよ。そこをみじんも考えたことがなかった。入試の前日まで一日中過去問を解いていて、試験会場でも始まるぎりぎりまで勉強していました。一方、後期試験では大好きなバスケ漫画「SLAM DUNK」を持って行きました。

 自分の機嫌の取り方は自分が見つけなきゃいけないんだと、受験を通じて学びました。中学の頃、所属していた体操部内で陰口を言われていたんですが、そのことで思い詰めて気持ちの浮き沈みが激しかったんです。それでも定期試験や高校入試があるので、しんどいのと折り合いをつけながら勉強するにはどうしたらいいか、考えました。

 計画を立てるとき、毎日何時間やる、とか決めずに、量で決めるようにしたんです。1週間で最低20ページやるとか、一定の期間で幅を持たせました。ページ数も、できそうな量から少し減らしたぐらいに設定しました。心がつらくてできない日もあるけど、それでもいいと受け入れられたらすごく楽になれました。目標を達成するとうれしくて、結局少し多めにやることができたんです。自分のメンタルにあった努力の仕方を見つける経験は、将来にも生きると思います。

 ユーチューバーをやっていると、コメントやメールで「わかりにくい」「気持ち悪い」などたたかれることがあります。どうしても気になりがちですが、視野を広げると大半は応援のメッセージなんです。僕はメンタルを安定させるため、全体を見ることを大事にしています。これも受験で人間修行を積んだからできる。いまの受験生にも、自分にあったやり方を見つけ出してほしいと思います。

学校の先生の魅力を発信したい

 今の仕事での目標は、学校の先生の魅力を発信することです。最近は僕の授業動画を見て、小中高校を問わずいろんな先生が連絡をくれるようになってきました。地域の教員研修や講演会に呼ばれてやりとりする機会も増えました。私がお会いする先生って本当に素敵な方が多くて、授業力が高いんです。

 学校の先生の不祥事のニュースが目立ってあまりイメージがよくないですよね。もちろん変な先生も一部にいますが、多くはそうじゃないんだということを世の中に伝えたいんです。例えば、動画にゲストとして出ていただくとか、葉一っていうフィルターを通じて世の中に発信できたらちょっと見え方が変わるんじゃないかなあと思っています。

 いま、授業動画を撮るのがとても楽しい。受験したことも、教員免許をとったことも、全ての経験がいまの仕事に結びついていると思います。遠い先のことはわかりませんが、当面はこの世界で頑張りたいと思っています。(聞き手・高浜行人)

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 はいち 1985年生まれ、福岡県出身、群馬県在住。塾講師や教材販売会社の社員を経て、2012年からユーチューブチャンネル「とある男が授業をしてみた」(登録者数約170万人)で授業動画を公開している。

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