「仕事あっても…」食料支援の列へ 並ぶ人の声に浮かぶ困窮の実相

有料会員記事

編集委員・清川卓史
[PR]

 自治体の窓口が閉まっていた年末年始、生活に行き詰まった人を支える食料支援などの取り組みが東京都内各地で実施された。仕事があっても収入減で苦境に陥っている人、20~30代の若い世代、女性や子ども連れ。大みそかから三が日までの4日間。食料配布の列に初めて並んだという人に何人も出会った。コロナ以前とは状況が異なる「年越し支援」がそこにあった。

12月31日 「生活保護は考えていない」

 「手持ちのお金はあと2千円ぐらい。11月から節約してきたけど、家賃や光熱費を払うとほとんど残らない」

 2021年の大みそか、新宿区の大久保公園で実施された「年越し支援・コロナ被害相談村」。提供された「チキン南蛮弁当」などが入った袋を抱え、ビル清掃業の男性(38)はそう声を落とした。日雇いのような雇用形態で、年末年始に仕事が激減、食費にも事欠く状態になっているという。年越し支援の利用は「初めて」と話した。

 記者が翌日以降の支援会場などの情報を伝えると、「助かります。スマホグーグルマップで見せてもらえますか」と依頼された。男性の携帯電話は料金未払いで使えなくなっていた。

 男性によると、20年の春までは飲食店で働いていたが、コロナ禍で閉店。ハローワークに通い、いまの清掃の仕事をはじめたということだった。

 同じ大みそかに、豊島区の東池袋中央公園では、NPO法人TENOHASIが炊き出しを実施した。

 長い列のなかに、半年ほど野宿生活を続けているという男性(31)がいた。もとはゲームのプログラマーとして働いていたが、心の不調で退職、その後は飲食業の仕事についたものの、コロナ禍のあおりで再び職を失った、と語った。昨年秋からは、ホームレス状態の人を支援する雑誌「ビッグイシュー」の販売員として働き始めているという。

写真・図版
NPO法人TENOHASIの炊き出しで、食料の入った袋を受け取った人々=21年12月31日、東京都豊島区

 「野宿していると夜露で寝袋の表面が凍るんです」。過酷な路上の暮らしのいったんを男性は明かした。生活保護の利用についてたずねると、「考えていない。親に連絡がいくのが嫌だから」と即答した。ぎりぎりの苦境にあっても忌避される生活保護。「最後の安全網」がその名前のようには機能していない現実があった。

 男性は「(雑誌販売でお金をためて)再びゲーム制作の仕事をするためのパソコンを買うのが目標です」と話してくれた。

 TENOHASIによると、この日の食料支援に並んだ人数は285人。12月29日、1月2日の支援を含めた3日間の平均人数は約320人に達した。これまで最も多かった2010年元日の245人を大きく超え、年越し期間として過去最多を記録した。

1月1日 「残業なくなり生活苦しい」

 22年元日。東京都庁前(新宿区)では、自立生活サポートセンター・もやいの食料提供、各種相談が実施された。集まった人の数は387人。1年前の正月支援の190人と比べて倍増している。

 相談の列のなかに、幼い娘2人を連れ、大きなリュックを背負った若い母親の姿があった。すぐ後ろに並んでいた中高年の男性が、自分が受け取ったであろう食品の袋を親子にそっと手渡し、立ち去るのを見た。子どもたちは寒風に身を縮めていた。支援スタッフは近くにとめてある車の中に親子を案内し、相談を受けていた。

 「血糖値」についての本を読みながら列に並ぶ高齢の女性がいた。一人暮らしの85歳。収入は国民年金だけで家賃もかかり、生活に余裕はない。月2回ほど定期的に食料支援を利用しているという。女性は「心臓が悪くて通院しているが医療費の負担が重い。なにかいい方法はないだろうか」と話した。

 「グーグルで『東京 食料支援』などと検索して見つけた。(食料支援を)利用するのは初めて。少しでも家計を切り詰めようと思って」。そう語ったのは、人材派遣で働く男性(49)だ。コロナ禍で仕事が減って暮らしが立ちゆかなくなり、働いても足りない分について生活保護を利用している。いまは役所に紹介された無料低額宿泊所から出勤しているという。

 大久保公園では、前日に続き「コロナ被害相談村」が開催された。ここでも、「働いているが」という人の声を複数聞いた。

写真・図版
「年越し支援・コロナ被害相談村」で食料を受け取り帰る男性=2021年12月31日、東京都新宿区、川村直子撮影

 物流業界でアルバイト社員として働いてきたという男性(54)は、大みそかのテレビニュースでコロナ被害相談村のことを知り、元日に初めて足を運んだ。「コロナ禍で会社の仕事が減り、残業がなくなって、生活が苦しくなった」と話した。コロナ以前と比べて収入は月3万円ほど落ち込んでいるという。コロナ禍のなかで、これまでも家計が苦しいときにフードバンク団体の食品提供などを利用してきたそうだ。

1月2日 チャットで「助けてください」

 年明け2日は、自立生活サポートセンター・もやい(新宿区)が取り組むチャット相談・駆けつけ支援を取材した。ホームページのチャットから相談を受ける。急を要するケースで、都内・都近郊であれば、車で相談者のいるところへ駆けつける。年末年始の特別対応として、12月30日と1月2日の午後3時~午後9時に実施した。

 スタッフが待機する事務所のパソコンに切迫したSOSが次々ととびこんできたのは、2日の午後5時半以降だった。

 「助けてください」…

この記事は有料会員記事です。残り1806文字有料会員になると続きをお読みいただけます。