「国民クイズ」原作者、30年目の回顧 あの頃、そして現代の閉塞感

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聞き手・野波健祐
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 2021年に大ヒットした韓国ドラマ「イカゲーム」など、デスゲームもののフィクションが話題になるたび、先達として取り上げられる漫画がある。1993年に「週刊モーニング」誌で連載された「国民クイズ」(原作・杉元伶一、作画・加藤伸吉)。議会制民主主義を捨て、クイズに勝ち抜けばどんな欲望もかなう「国民クイズ体制」に移行した近未来の日本を舞台にした作品だ。2001年には太田出版から上下巻の復刻版が刊行され、9刷を重ねている。今なおカルト的な人気を誇る作品はいかにして生まれたのか。連載から30年をへて、原作者の杉元さんに聞いた。

 ――「国民クイズ」はクイズに合格すれば、どんな望みもかなう仕組みがユニークです。ただし実現が難しい願望ほど合格点は高く、不合格になると「戦犯判決」を受け、過酷な罰を科せられる。国民は一生に一度、「自己責任」において夢をかなえる権利を保障されたシステムです。どう発想したのですか。

 いつ思いついたかははっきり覚えてないのですが、政治について考え始めたのは高校生の頃、(歴史家の)羽仁五郎さんの「月刊プレイボーイ」のインタビュー(81年5月号)を読んでからですね。理想主義による革命を起こしたかった羽仁さんが、なぜ日本で革命が起きなかったのかというメカニズムを、次世代を担う若者に向けて語っていた。アジテーションが論理的でうまいんですよ。それに触発され、じゃあ今の日本で革命を起こすとしたらどういう形になるかを高校生ながらに考えた。

 その後、大学時代の文芸サークルで、同人誌に発表した短編小説が「国民クイズ」の原型になっています。僕は生まれたときから55年体制が続いていた世代。連載開始当時は細川(護熙)政権すら生まれてなく、その体制がひっくり返るとは思えなかった。そこから来る閉塞(へいそく)感というものは、僕たちの世代にもあったと思います。

 資本主義に変わる理想主義といえば社会主義があったけれど、その頃はソ連の化けの皮がはがれていて、北朝鮮などの悲惨な現実も伝わってきていて、社会主義をやったところで出てくるのは独裁者だった。じゃあ、どんな社会を実現すべきなのかを考えたとき、富の再分配が政府の仕事だというのを何かで読み、持てる者と持てない者の格差をどう調整するか考えたんです。

 ――再分配のシステムが、なぜクイズになったのでしょうか。

 連載当時はあまり反響がなかったという「国民クイズ」。国民みなが納得する再分配システムとは何かを考えることから生まれた作品が、いまなおカルト的な人気を博すにいたった舞台裏を杉元さんが語っていきます。

 どんな国家体制でも国民全員…

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