「ノスタルジーへの投資か」悩んだ先に 酒蔵の覚悟、酒米もわら縄も

有料記事KANSAI

文・長沢美津子 写真・新井義顕
[PR]

 酒を詰めた大だるは100キロ近い。指3本分はある太縄で抱きかかえるように、きりりと結び上げる。

 2021年師走、剣菱酒造(神戸市東灘区)の蔵の一角で、迎春の菰(こも)だる作りが進む。若手に教えながら作業する品質管理室の中野勝さん(48)は額の汗をぬぐって「太い縄は、つかんでたるを動かす手綱。伸びてゆるむようではいけません」。わらの縄はしっかり締まるのだという。送り出す先にどんな祝いや喜びの場が待っているか。詰めて10日ほどすると、たるの木と酒の香りがなじんで飲みごろになる。

 いま剣菱で使うわら縄は、中野さんたち社員が4台の機械を操作して作っている。メーカーが太い縄の製造終了を決めたことから機械を手に入れ、引退した技術者を訪ねて指導を頼み、足りない部品は補って4年がかりで復活させた。その経緯を社長の白樫政孝さん(44)は、「お酒の味に直接は関係しないことです。ノスタルジーへの投資ではないかと悩みました」と打ち明ける。

 同じころ、正月飾りに樹脂製…

この記事は有料記事です。残り890文字有料会員になると続きをお読みいただけます。
#KANSAI

#KANSAI

近畿の魅力を再発見する新企画。社会・経済から文化・スポーツまで、地元愛あふれるコンテンツをお届けします。[記事一覧へ]