「他者とのズレが個性」 日比野克彦がマティス、ゴヤと出会ったら

有料会員記事

田中ゑれ奈
[PR]

 手の動くままに切り抜かれた段ボールは、アンリ・マティスの即興的な切り紙絵と響きあう。兵庫県姫路市立美術館美術家日比野克彦と協働した展覧会「展示室で会いましょう」。同館が所蔵する6作家の作品群と日比野の新旧作を並べて、共通項を抽出する試みだ。

「言葉ではない何か」を描く

 日比野は1980年代、ジャケットや靴といったモチーフを段ボールでつくる造形作品で脚光を浴びた。「大衆文化の寵児(ちょうじ)という見方もされたが、時代に迎合したわけではない。社会の動きをクリアに見通しながら、そこに自分の身体がどう反応するかを高度に作品へと昇華した作家」と不動美里副館長。たとえば、環境問題に切り込んだ90年前後の日比野作品とフランシスコ・デ・ゴヤの風刺銅版画集からは、いずれも鋭い社会批評が読み取れる。

 記事後半では、日比野克彦さんのインタビューも。マティスへの憧れや作風の変遷について語ります

 90年代の日比野作品には抽象的な表現が多くなる。言語によって世界を理解する以前の身体感覚を創作のベースとし、「絵を描いているときに考えている、言葉ではない何か」を意味する造語「ホドォ語」を作品としてイメージ化した。言葉に着目することでその制約を脱しようとした姿勢は、老子の言葉をもとに「無の境地」を描いた現代美術家ガブリエル・ベルジョンヌや、詩人でもあった画家アンリ・ミショーの抽象画にも通じる。

 ベルギーの現代美術家ピエー…

この記事は有料会員記事です。残り1164文字有料会員になると続きをお読みいただけます。