げっぷしない牛を開発するより… 市場と民主主義の限界を超える思想

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河崎優子、興野優平、高久潤
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 なんだかんだ言っても人間は自分がかわいいもの。将来世代のために長いタイムスパンで考えて何かを決めるなんて「キレイゴト」と思っていませんか?

 持続可能な開発や気候変動というテーマが国際政治を動かすようになっても、身近な問題と考えるのは簡単ではないかもしれません。でも、人間にはそもそも、未来のために自分が我慢したり、妥協したりできる性質があるそうです。

 ちょっとした仕掛けでその性質を引き出し、自分たちで新しい未来をつくろうとする手法に「フューチャー・デザイン(FD)」があります。今のままでは人類が存続できないのではないか、という危機感から出発したフューチャー・デザインは、コロナ禍前から国内の自治体でも導入されています。

 先行きの見えないコロナ禍に身につけるべき思考法を、高知工科大FD研究所、西條辰義所長に聞きました。

フューチャー・デザインって一体何?

 ――そもそも、フューチャー・デザインとは何なのでしょうか。

 将来世代の視点を取り入れて物事を決めていく仕組みのことです。将来世代になりきって議論することで、目の前のことにとらわれなくなり、従来考えてもみなかった新しい未来像を生み出すことができるようになります。

 決して新しい発想ではありません。実は昔からありました。わかりやすい例は、北アメリカの先住民、イロコイ族の思想です。彼らは重要な意思決定をする際、「7世代後の人々」になりきって考えました。憲法にあたる彼らの結束法には「将来世代を念頭におき、彼らの幸福を熟慮せよ」と記されていました。部族の紛争を避ける仕組みをつくるには、現在だけでなく将来の視点が必要と考えたのでしょう。

 この結束法は、米国の憲法や連邦制度に影響を与えました。またヨーロッパの啓蒙(けいもう)思想にも影響を与えたと言われています。日本国内にも地域によっては将来世代のことを考えて、という取り決めがあったと言われています。これは特定の地域や国の発想ではないないのでしょう。

 ――なぜ「7世代先」なのでしょうか。

 血縁関係がわからないくらい…

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    井本直歩子
    (元競泳五輪代表・国連職員)
    2022年1月9日12時33分 投稿

    【視点】ニュースを見ていると、将来世代のための視点があまりにも欠けていることに憤る。もっとこのような議論がされるべき、主流になるべきだとつくづく思う。 「キレイゴト」も大いに結構ではないか。真剣に議論すれば、「未来のために自分が我慢したり、妥