壁穴から熊の手、コーヒーをサービス 話題のカフェにこめられた願い

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上海=井上亮
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 1年前、上海の旧フランス租界に、壁にひとつ穴が開いた外観の小さな店ができた。穴から毛むくじゃらの熊の手が商品を手渡してくれるコーヒー店だ。SNSで「映(ば)える」と評判の人気店になった。でも、一風変わった営業スタイルは客寄せではなく、ある「壁」を打ち破るためだった。(上海=井上亮)

 昨年12月上旬、プラタナスの並木道を曲がると、カフェが立ち並ぶおしゃれな通りに入った。その一角に、「熊爪珈琲」(熊の手コーヒー)はあった。

 注意しないと目に入らないほど地味で、看板すらない。灰色の壁に、30センチ四方の穴が一つだけ開いている。テイクアウトのみで、客席はない。そのため、客席のある一般的な上海のコーヒー店より価格設定は安く、20~30元(約360~540円)が中心だ。

 注文は、穴の下にぶら下がった商品のQRコードをスマホで読み込むか、アプリで行う。

 商品ができると自動音声で番号が呼び出される。すると、熊の手がカップに入ったコーヒーを穴からすっと差し出す。

 商品を手渡すと、「熊」は手を振ってくれたり、握手に応じてくれたりすることもある。

 ほとんどの客は商品を受け取る時にスマホを向けて、その様子を撮影している。周囲の人たちも、スマホで動画や写真に収めていた。

 大学生の沈煜雯さん(19)は「興味はあったけど、来たのは初めて。熊の手がかわいい」と満足げだった。

単なる「客寄せ熊」ではなかった

 2020年12月にオープンすると、インターネット上で影響力のあるインフルエンサーなどが取り上げ、瞬く間に「網紅店」(ネット上で注目される人気店)となった。

 商品受け取りまで長いと数時間待ち。路上に客があふれ、警察が交通整理に出動しなければいけないほどだった。人気は海を越え、日本でも模倣した店が現れたという。

 奇抜な発想は上海っ子の心をつかんだ。だが、単に消費者を引きつけるための「客寄せ熊」ではなく、ある意図があった。

 じつは、「熊」の多くは、聴…

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