警察は「違法状態」指摘 香川おなじみ、路面の3本指マークは残るか

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谷瞳児
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 3本指の手形と左右の足形。香川県内の道路を歩くと、路面の黄色いマークに気づく。多くは信号機のない横断歩道の前に描かれていて、足形から考えれば「止まれ」の標示。でも、3本指はなんだろう。福岡県出身で、香川に昨春赴任した記者(24)は戸惑った。

 取材先など香川在住の何人かに聞いてみると、30~50代は3本指の意味を知っていた。

 「わたしは かならず とまります」。幼い頃、足形のある場所で指折り数えながらこう唱えるよう教わったという。「みぎみて ひだりみて もういちどみぎみて」と唱えた記憶がある人もいた。

描いているのは行政?

 道路標示だから行政が描いているのだろう。香川県道路課に問い合わせると、意外な答えが返ってきた。「自治会やPTAなど地元の方がやってくれているみたいです」

 それならばと、高松市PTA連絡協議会事務局に尋ねた。「各地域でPTAや交通安全母の会といった有志が定期的に塗り替えていました」。自治体から型板やペンキを借り、子どもの飛び出しの危険性が高い地点に、このマークを塗っていたのだという。活動は数十年前に始まり、定期的に塗り直し、新たな地点に描いてきたこともわかった。

 では、このマークはいつからあるのか。行政文書などを保管している香川県立文書館で調べてみた。

 3本指についての最も古い記述は、1973年の「香川県交通安全県民大会」のしおりにあった。親子で交通安全に取り組む「こじかクラブ」の発足を伝える中で、3本指の絵と「わたしは かならず とまります」の標語が大きく描かれた表紙の教材が紹介されていた。発行者は「香川県・香川県教育委員会・香川県警察本部」とある。

 同じ年に内閣総理大臣官房交通安全対策室が発行した「幼児交通安全クラブの手びき」にも、「『3本の指』と『正しい横断』の訓練事例」として、「3本の指をまとめて『ボク・ワタシ・必ず・止まります』という意味を持たせる」と紹介。3本指マークこそ香川県特有だが、標語は全国的に浸透が図られたようだ。

 当時は「交通戦争」と表現された時期。70年には年間の交通事故死者が全国で1万6765人とピークに達し、香川県でも前年の約1・8倍にあたる232人が亡くなった。15歳以下の事故件数は953件と前年より約3割増で死者は22人を数えた。事故原因の多くが飛び出しだった。

 社会問題化した交通死亡事故を抑えようと、国は交通安全運動を強化。香川ではこの時期に3本指マークが登場した。当時の香川県の交通安全教育は、地域のPTAや交通安全母の会の協力を仰いで推進する方針となっており、住民の手でマークが広がっていったとみられる。

実は許可が必要だった

 しかし今、3本指マークは存亡の危機にある。5年ほど前、このマークは「違法状態」だと香川県警などから指摘を受けたのだ。県警交通規制課によると、道路標示は本来、国道事務所や自治体などの道路管理者に許可を得た上で設置される。しかし、3本指マークの大半はこうした手続きを経ていないものだった。

 高松市は指摘を受け、地域団体への塗装道具の配布を取りやめ、「マークを描く場合は道路管理者の許可が必要」と通知した。これを機に活動をやめた地域もあったとみられる。いま街角で見かけるのは、黄色い塗料が薄れ、原形をとどめていないものが多い。

 ところがその後、塗装の再開…

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