第8回多忙や怠惰に出来心…数字を偽る誘惑は多様 誰のための統計なのか

有料記事国交省の統計書き換え問題

聞き手・大内悟史
[PR]

 国の統計への信頼を揺るがせた国土交通省の書き換え問題。背景や影響について、政治思想史が専門の重田園江・明治大教授にインタビューしました。

明治大教授・重田園江さん

 ――霞が関で新たな統計不正が明るみに出ました。どう見ていますか。

 官公庁が扱う数字は正確なものだと考える人は多いでしょう。ですが、お粗末な統計不正がたび重なるのを見ると、埋もれた不正が他にもある可能性は高い。今回問題になった国土交通省では、前任者からの引き継ぎを重ねるうちに雪だるま式に不正が隠蔽(いんぺい)されていった経緯があるようです。まだ明るみに出ていない不正を抱える省庁があり、担当者がびくびくしているかもしれない。

 ――国の統計という最も信頼できるはずの土台が掘り崩される感じがします。

 中央省庁の数字といえど無邪気に信用できず、一度は疑ってかかる必要があるという認識を持つべきではないでしょうか。

 私たちは誰かに具体的な数字を示されると、なんとなく客観的で動かしがたい現実を突きつけられた気がしてそれを信じてしまう。近年は医療や政策立案にエビデンス(科学的根拠)が求められるようになり、経済学や政治学、社会学も何らかの数字や数式を根拠にする「数学化」の傾向が目立っています。

 ただ、学問の世界ではそのデータをどのように算出したのか、本当にその考え方でいいのかなどが絶えず議論の対象になっています。私自身は「エビデンス・ベースド」(科学的根拠に基づいた)と言われると「ちょっと図々(ずうずう)しい言い方だな」「厳密な因果関係と統計は違うのに」と感じています。

数字を偽る動機や誘惑とは。国家は統計をどのように使ってきたのか…。インタビューでは重田さんが思想家フーコーの研究などを踏まえて解説します。

公的統計を必要とする人とは?

 ――国の統計のあり方につい…

この記事は有料記事です。残り2078文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

【10/25まで】すべての有料記事が読み放題!秋トクキャンペーン実施中!詳しくはこちら