第43回「夢があるのは強い」無料塾開いた大学生 人と違っても揺るがぬ自信

城真弓
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受験する君へ 北九州市立大・中原大地さん

 教育の力で子どもたちを救いたい。

 北九州市立大1年の中原大地さん(19)は、中学の授業で海外の貧困地域の子どもたちについて学んで以来、その夢をかなえるためには何が必要か、常に自分の人生を逆算して考えてきたという。

 世の中のことについて無知だった自身を恥じ、毎日、新聞やテレビで政治や国際問題のニュースを見ては、家族と意見を交わした。貧困問題解決のためには、具体的にどういう支援が必要なのか、現状を調べ、必要な取り組みについても考えた。

 貧困の連鎖を断ち切るには教育が必要だと考え、高校生の時にカンボジアへ行き、ボランティアで現地の子どもたちに英語を教えた。

 その準備として、地元にいる外国人に日本語を教えるボランティアにも携わった。英語や社会、とくに世界史の勉強にも力を入れた。

 通っていた高校は進学校だったので、時期が来れば周囲は受験モードに突入する。

 だが、自分の将来に役立つ勉強のために時間をとりたい、受験に合格するためだけの勉強に時間を費やすことはもったいないと思っていた。「大学に行きたいというこだわりもなかった」と振り返る。

 ただ、学びを深めることの必要性は感じていた。

 そんなとき、地元の北九州市立大に国際問題を学べる外国語学部があり、総合型選抜(旧AO入試)をしていると知った。

 国際問題についての小論文や集団討論などで合否が決まる。

 これまでの学びや経験を受験に生かすことができる上、自身が学びたいことが大学で学べる。

 それまでの数年間で学べるだけ学んできたため、どんなテーマがきてもだいたい自分の考えはまとまっていた。

 受験対策は小論文の書き方を学校で少し学んだ程度ですんだ。

 もちろん順風満帆で進んできたわけではない。

 カンボジアへ行くことや、学校の授業に最低限しか取り組まないことに両親は反対した。その度に自身の目標を話し、理解してもらってきた。

 今、改めて思うのは「夢があることは強い」ということだ。

 「夢がなければ今の僕はいない」。周囲が受験勉強にいそしむなか、人と違うことをしていても不安にならなかったのは確固たる夢があったからだという。

 大学入学後、再度海外でのボランティア活動を予定していたが、新型コロナウイルスの猛威で当面延期となった。

 だが、それでもくじけることはない。

 国内でもコロナによる貧困や一斉休校などによる教育格差が生じていることを知り、「少しでも何かできることはないか」と、昨年の春休みに小学生を対象に地元で無料塾を始めた。

 市民センターの一室を借り、高校の同級生や後輩らとともに週2回、約20人にボランティアで教えた。

 長期休暇中だけの予定だったが、夏休みの開塾後、「今後も続けてほしい」という声を受け、今でも週に1度開いている。

 今後、塾の運営主体をNPO法人化することも考えており、いずれは世界の子どもたちの支援に向けた足がかりにする予定だ。

 たどる道順は違ったとしても、その先にある夢は変わらない。

 いつか世界の子どもたちを支援するため、今は国内で準備中だ。「自分にとって何が一番大事か自己分析をすると将来の夢も出てきやすい。大学入試はその通過点です」(城真弓)

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