第1回「サルは何匹用意?」国内勢、手探りのワクチン開発 国の支援整わず
田中奏子、千葉卓朗
瀬戸際の感染症ビジネス 1
製薬企業にとって感染症は経営リスクと隣り合わせだ。ワクチンや治療薬は感染が収束すれば売り上げが立たなくなる。日本は、そのリスクと正面から向き合ってこなかった。そのツケが新型コロナウイルスのワクチン開発の遅れという形で露呈した。
2020年春、コロナワクチン開発を始めた塩野義製薬(大阪市)の実験室では、試行錯誤が続いていた。動物への投与実験のノウハウが十分ではなく、「サルを何匹用意すればいいのかも分からなかった」(手代木功社長)。
塩野義は、エイズを引き起こすヒト免疫不全ウイルス(HIV)やインフルエンザウイルスの治療薬の開発を手がける感染症専門の製薬会社だが、感染症を予防するワクチンの本格的な開発は初めてだった。
最終治験入り 新規参入の塩野義だけ
「感染症を手がけているのにワクチンをやっていないのは矛盾だ」。そんな考えを持つ手代木社長はその半年前、インフルエンザワクチンを開発するベンチャー企業の買収を決断した。
この企業は、鶏の卵を使う一…