農業高校の実力見せる「栃農給食」 育てる過程も紹介

根岸敦生
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 「食料自給率58・5%」

 国内自給率ではない。県立栃木農業高校が栃木市大平地区の学校給食に提供した栃農生産自給率だ。

 昨年12月1日の「栃農給食デー」。「地産地消・食育の推進と生徒の学習成果の披露」のため、初めて実施された。大平地区の小中学校6校に栃農の生徒たちが作った食材を振る舞った。この日に向けて学校が一丸となり、豚を飼育してコメや野菜を育てた。

 「栃農給食デー」の構想は昨春、農場長で動物科学科長を務める藤沢暢恒教諭(41)が前任者から託された。農業高校の実力を地元の子どもたちに知ってもらう機会をつくりたいという提案だった。

 6月から本格的な準備が始まった。動物科学科、植物科学科、食品科学科、環境デザイン科の総がかりの取り組みになった。

 給食デーに合わせて子豚の肥育をスタート。コメを育て、みそも仕込んだ。ハクサイ、ネギ、ブロッコリー、キャベツの栽培も始めた。6月生まれのブタは順調に生育しすぎたため市場に出荷し、7月生まれのブタを代わりに育てた。

 農業に関心を持ってもらうため、豚や稲の生育状況は学校のウェブサイトや給食だよりなどで児童生徒や保護者に紹介した。藤沢教諭も出前授業で小中学校の教壇に立ち、ドローン活用や家畜の出産時期を知らせてくれる分娩(ぶんべん)センサーなどIoT技術を活用したスマート農業を説明した。

 授業を通じて、藤沢教諭は「農業は汚い、つらいみたいな先入観が強い」と感じた。改めて栃農生たちに「給食デーは誤解を解く格好の機会」と呼びかけ、やる気を鼓舞した。

 動物科学科の生徒が豚舎で育てた子豚は冬が近くなると、約120キロの巨体に成長した。体重計にのせるのも数人がかりの大仕事になった。給食デーという目標があることで、これまで以上に盛り上がった。ハクサイやキャベツはなかなか結球せず心配したものの、何とか出荷に間に合った。

 12月1日。大平中の生徒たちが給食を食べる様子を栃農生5人が見学した。献立は、豚肉の新生姜(しょうが)焼き、ブロッコリーとキャベツのサラダ、ハクサイとネギのみそ汁。笑顔でおいしそうに食べ、おかわりする中学生の姿に、生徒たちも満足そうだった。

 5人は「県内の農業高校で2位になった米」「8頭出荷したブタのうち、1頭は豚肉の格付けで1%未満しか評価されない極上、残りも上が5頭、中が2頭と上々の成績でした」と胸を張って紹介した。

 生産者と消費者を近づける今回の試みは、栃農生や子どもたちだけでなく、周囲にも刺激になった。

 給食デー実現に大平学校給食センターの中田智子栄養教諭(54)もひと役買った。「給食メニューを学習教材に変えるようにしている。栄養教諭は地域と子どもの未来を支援し、地域を食でつなぐ役割も果たしている」と説明。日本栄養士会が参加した12月の「東京栄養サミット2021」で今回の試みを発表した。

 県内7校の農業系高校のうち、「農業高校」の校名を守るのは栃農だけだ。学校給食との連携はこれからも続けていく。栃木市の大川秀子市長も「市内の農産物をもっと学校給食に採り入れていきたい」と意欲を示している。根岸敦生