「人材確保と信用力強化に」東証再編、プライム市場めざす企業の思い

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稲垣千駿 中川透
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 最上位市場に上場できる企業を絞り込んで成長期待を高め、投資マネーを呼び込む。そんな狙いを込めた4月の東証再編だったが、1部上場企業の約8割が最上位の新市場に移ることになり、開始時点では小幅な改革にとどまりそうだ。海外の株式市場との競争が激しさを増すなか、再編が看板の掛け替えに終われば、日本市場の地盤沈下に拍車がかかりかねない。

東証1部、トヨタ自動車から地方銀行まで

 「本日は長い道のりのスタートライン。上場企業の企業価値向上の取り組みを支えるとともに、引き続き我が国株式市場の信頼と魅力向上に努めていく」。東証の山道裕己社長は11日、市場再編を間近に控え、報道陣にそう宣言した。

 東証が半世紀以上も歴史がある東証1部などを廃止してまで、新市場を設けるのは、各市場の性格をはっきりさせることで、投資をしやすくする狙いがある。

 とくに、東証1部には、時価総額37・8兆円のトヨタ自動車から数十億円の地方銀行まで、全上場企業の約6割の企業が上場しており、最上位市場としての性格がわかりにくい。そこで、従来より厳しい上場基準を設け、日本を代表する大企業に絞った最上位のプライム市場を設け、海外からも投資を呼び込む戦略を描いていた。

 ところが、11日に公表された移行先をみると、東証1部企業の大半がプライム市場へ移る結果となった。最大の理由は、1部企業なら基準を満たさなくても、プライムに移行できる経過措置を設けたことだった。

 長く大企業の代名詞となってきた「1部上場」というステータスは、人材の採用や取引の現場では大きな意味を持ち、厳格な基準でいきなり絞り込むことには反発もあったためだ。実際、昨年6月末時点で基準に届かなかったのは1部企業の約3割の664社あった。今回、この経過措置でプライムに移行する企業は296社に上った。

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    常見陽平
    (千葉商科大学准教授・働き方評論家)
    2022年1月13日6時30分 投稿
    【視点】

    ■上場企業なら人材を確保できるのか?日本企業は職場として魅力的なのか?真摯に顧み、敬虔な反省を!  「上場」と「人材確保」について考える。記事にも、上場が人材の採用に貢献するという趣旨の記述がある。本当にそうなのか、  上場が人材採用に

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