なぜ人間は他人のために動くか 人に埋め込まれた「利己」と「利他」

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聞き手 シニアエディター・尾沢智史 編集委員・塩倉裕 聞き手・岸善樹
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 ともに生きるには「利他性」が必要だといわれる。しかし、他人のために見える行動も、実は自分のためかもしれない。簡単には割り切れない「利己」と「利他」の関係を考える。

共存は「自己家畜化」の産物 小田亮さん(自然人類学者)

 ヒトは、他の生物と比べて、きわめて利他的な種だといえます。他の生物でも利他的な行動は見られますが、ヒトは、血縁ではない相手も助ける、頼まれなくても助けるという点で特異です。チンパンジーは、相手に要求されて助けることはあっても、自発的に助けようとはしない。ヒトは、道で倒れている人がいれば助ける。いわば「おせっかいなサル」なんです。

 ヒトも生物ですから、本質的には利己的に行動するはずです。将来の「お返し」を期待する利己的な動機であっても、結果的に自分がコストを払って相手に利益をもたらせば、その行動は利他的になる。しかし、恩恵を受けるだけでお返しをしない「フリーライダー」が増えると、利他的な人は不利になります。

 だからヒトは、フリーライダーを排除する心理的傾向を進化させました。コロナ禍で見られた「自粛警察」も、そうした心理の表れでしょう。利他性と、ルールを破る者の排除は表裏一体なのです。

 協力的な傾向を持つ人だけで同質性の高い集団をつくれば、利他行動は進化します。多様性と利他性は、基本的には両立しません。多様性を高めると、フリーライダーも入り込みやすくなるからです。

人間に特有な利他性。そんな特性が生まれたのはなぜなのでしょうか。記事後半では、大竹文雄大阪大学特任教授が行動経済学の観点から、人々が利他的なメッセージにより動き始める背景を読み解きます。さらに介護福祉士でモデルの上条百里奈さんが、利己から始まる介護について語ります。

 しかし、あまり同質性を上げ…

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