家畜はただ殺され、牛乳は水のように… コロナで見えた共通の構図

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石山英明
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 コロナ禍で物流が滞り、日本では「からあげショック」「ミートショック」など、商品の品薄現象が起きました。海外でも食肉工場でクラスターが発生し、スーパーから一時的に牛肉が消えるなどの混乱が発生しました。

 世界各地の働き手の現状に詳しい、NPO法人アジア太平洋資料センターの内田聖子共同代表は、「これらは、先進国が抱える共通の課題、構造のあらわれです」と言います。どういうことでしょうか。

コロナ禍であぶり出された働き手の問題

 ――普段、どのような活動をされているのですか。

 私たちは、50年近く活動している団体です。高度経済成長期に日系企業が途上国に進出して商品の供給網を構築したとき、現地の環境を破壊しながら、劣悪な労働条件で働かせ、場合によっては賃金を払わないというようなことがありました。現地のNGOなどから情報を得て、日本に情報発信したり企業に問題提起したりしてきました。

 近年では、食の分野だけでなく、100円ショップ向けの商品製造とか、アフリカや中南米レアメタル採掘などでも同じようなことが起きており、こうした物流の問題点を可視化する活動をしています。

 ――コロナ禍で働き手の置かれている状況にどのような影響がありましたか。

 米国では、医療・介護・福祉の分野や、刑務所、食肉工場でクラスターが多く発生しました。

 食肉工場の稼働が止まったため、農家が豚や牛を工場に納めても処理してもらえず、ただただ殺されるだけの家畜が膨大に発生しました。

 乳製品の工場も止まり、牛乳が水のようにひたすら捨てられ続けました。その結果、品薄にもなり、スーパーに行っても肉や乳製品が棚にない、棚に並ぶやいなや奪い合いになる。それが米国で2~3カ月続きました。

 国際的な流通に大きな影響力を持つアメリカの巨大商社の食肉工場では、1分間に100羽の鳥をさばいています。そういうところで働いているのは移民労働者が多く、賃金は安くて長時間・過密労働です。でも、感染者が出ても休みがとれない。熱があっても工場に来いと言われる。マスクの支給もない。

 労働者やメディアが追及した結果、マスクが支給されるようになったり熱が出たら休めるようになったり一定の改善はありましたが、今もクラスターの起きかねない状況は大きくは変わっていません。

移民、マイノリティーが過酷な労働環境で

 ――米国以外はどうでしょうか。

 イギリス、ドイツアイルランドブラジルの、いずれも食肉工場で同様のことが起きました。

 構図は先進国のどこも同じです。担い手になっているのは、移民、マイノリティー、貧困層です。低賃金、長時間、過密の劣悪な労働環境で、クラスターが起きやすい。この世界共通の構図を、食肉工場はたいへん象徴的に示しています。

 ――食肉工場以外でも、広範囲に影響が出ています。

 欧州の食料自給率は日本よりはるかに高いですが、それは外国からの労働者が支えています。

 フランスでは春先にアフリカなどから来てもらって収穫してもらっています。コロナで一時的な入国規制があったため、野菜などの収穫に影響が出ました。これもまた先進国共通の構図で、日本では外国人の技能実習生がいなくて農家が困っていました。農業の担い手という構造的な課題もまた、コロナ禍で可視化されたといえます。

コロナ禍でも、日本では食料が手に入らないといった事態にはなりませんでした。ただ、内田さんは「たまたま幸運だった」と指摘。後半では、持続可能な供給網を作るにはどうすればいいか、語ります。

最悪な事態は免れたけれど

 ――それでも日本では、食料が手に入らないとか、輸入が途絶えるとか、最悪の事態は起きていません。なぜでしょうか。

 たしかに、米国ほどのひどい…

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