21世紀は「コロナの世紀」? 停滞する日本、見つめ直す機会に
3年目に入った新型コロナウイルスのパンデミック。感染症と世界史の関係に詳しい石弘之・元東大教授(環境史)は、21世紀は次々に「新たな新型コロナ」が流行する「コロナの世紀」になる可能性があると指摘します。
とすると、この闘いは新型コロナと人類の「序盤戦」。生物学的には「ウイルスは人類の進化に不可欠だ」ともいい、感染症が社会変革をうながし、新しい時代をもたらしてきた側面もあるといいます。
経済的には長く停滞が続き、若者が希望を持てない国になってしまった日本。石さんは「コロナを社会を見つめ直す契機に」と提言します。私たちはどう向き合えばいいのでしょうか。
コロナ対応の評価は……
――3年目となった新型コロナのパンデミックが歴史に与える影響を教えてください。
パンデミックが広がった直後に遺伝情報を解読して、新しいワクチンを実用化した。効果についての歴史的な評価は時期尚早ですが、変異株も含めて新しい感染症に対応できるワクチンのコンセプトが確立したことは未来への大きな財産になるでしょう。
一方で、正体が分かったウイルスさえ退治できず、進歩を遂げてきたと自負してきた人類が、21世紀になってもこれだけ一方的に負けているのが実態です。全世界の人が常に、マスクの着用、手洗い、他人との距離をおくことを要求されるのは人類にとってはじめての経験です。それでも、わずか2年間の流行で、世界の感染者は約3億1千万人、死者は約550万人に達しました。21世紀以降では最多のパンデミックの犠牲者数です。
もとはコウモリのウイルスだったと考えられている新型コロナに苦しめられたように、人間も大きな生物界の一員であって、必ず天敵は存在することを改めて思い知らされました。
未知のウイルスが、コウモリの体内でも、世界中の人間社会の中でも次々に変異する。将来も同じようなパンデミックが繰り返されることが確実になったとも言えます。
21世紀は「コロナの世紀」
――21世紀は「コロナの世紀になる」と予想されていますね。
そうなると思います。
19世紀は結核とコレラ、20世紀はスペイン風邪を含むインフルエンザの世紀と呼ばれています。
飲み水が感染源と特定されたコレラの流行が、欧州で公衆衛生や都市衛生の向上につながったように、感染症は歴史に影響を与えてきました。
一方でコレラも結核も、産業…