第6回遅れてきた日本のIT化、非正規の大量失業も? 研究者の懸念
コロナ禍で、働く場でも一気にデジタル化が進みました。こうした変化が、何をもたらすのか。
技術の発展と働き方の関係に詳しい慶応大商学部の山本勲教授(労働経済学)は、オフィスで働く非正規雇用の人を中心に、場合によっては数百万人が、コンピューターによって代替される恐れがあると指摘します。世界的には、IT化で大幅に働き手が減らされる現象が既に起きています。どう向き合えばいいのでしょうか。
正規と非正規、二極化した日本
――オフィスのIT化が進むと、どんなことが起きるのでしょうか。
米国は1990年代~2000年代に、IT化が進みました。オフィスでの単純作業はコンピューターに代替され、働き手は削減されました。その結果、レストラン、ホテル、運転、修理など、低スキルでもできる仕事につく人と、企画のような、高いスキルの求められる複雑な仕事につく人に二極化しました。これはデータに裏付けられており、世界各国で共通の現象です。
日本もその傾向はあるのですが、他国よりもゆるやかでした。というのは、ちょうどそのころ、労働者派遣法の改正などもあり、本当はコンピューターに置き換わるはずの仕事が、非正規雇用の人たちに任されたのです。契約社員、派遣社員、パート、アルバイトなど非正規雇用が増えました。短期的に見るとそちらの方がコストが安かったのかもしれません。
高スキルと低スキルに分化した他国とは少し異なり、日本では正規、非正規に二極化したとも言えます。
コロナ禍によって、職場でも、家でも、デジタル化が一気に進みました。技術革新は、私たちの生活を幸せにするのか。そのためには何が必要なのか。第一線の研究者たちの論考をお届けします。
数百万人規模の可能性
――となると、IT化、デジタル化の大波が他国より遅れてやってきて、非正規雇用の人たちがこれからのみ込まれるということですか。
そうです。コロナ禍でデジタ…
【視点】 企業の生産性を高めて、競争力を、という議論がなされています。では、「生産性を高める」とはどういうことか。その中には、いま人が担っている仕事をITなどに置き換えていくことも含まれます。確かに、効率的に仕事を進めるためにはデジタル化は欠かせな