「だっぺ」だけじゃない 茨城弁の勉強おっぱじめてみた がんばっぺ
現場へ! 茨城の逆襲③
「ご出身は横浜ですか。えらい都会ですねえ」
3年前、静岡から水戸への異動が決まり、部屋探しに来たときのこと。案内してくれた30代とおぼしき不動産会社の人の口調が新鮮だった。文字で伝わらないのが口惜しいが、イントネーションが平坦(へいたん)なのだ。若者を中心に近年使われる「○○じゃね?」の言い回しに近いものを感じた。
赴任してみると、単語にも耳なじみのないものが多かった。こきおろすときは「ごじゃっぺ(いいかげん、バカ)」。腹立たしい気持ちは「いじやげる」。受け答えで使う「いやどうも」は魔法の言葉だ。文脈に合わせて「ありがとう」「そうでもないよ」「大変だねえ」などと意味が七変化する。
若い人もけっこう自然に茨城弁を操る。ある日、部屋に新しいカーテンを取り付けようとしたら、一緒にいた同年代の友人が言った。「すりびいてるよ」。頭に疑問符が浮かんだが、よく聞いてみると「引きずる」という意味らしい。本人は、方言だと思わずに使っていたようだ。
せっかくこの地で暮らしているのだから、茨城弁を使いこなしたい。まず頼ったのは、言葉の構造や表現などを研究する茨城大の川嶋秀之・特任教授(66)だ。
川嶋さんによると大きな特徴の一つが、濁音を多く使うこと。「さがな」(魚)、「こだづ」(こたつ)というように、2文字目以降のカ行とタ行が濁音になりやすい。「茨城県民は『いばらぎ』ではなく『いばらき』だと怒るが、自分たちは『いばらぎ』と言っている」という人もいる。これは、東北地方の方言にも共通点があるという。
促音、つまり小さな「つ」が多用されるのも特徴だ。おなじみの「だっぺ」は典型。「おっぱじめる」(始める)、「ぶっつぁける」(裂ける)など、接頭語を多く使うのも茨城弁ならではだ。茨城に住み始めたころ、なんとなく言葉が荒々しく聞こえたのは、この特徴のせいかもしれない。
ちなみに、だっぺの「ぺ」にも茨城弁の特徴が隠されている。「~だろう」「~しよう」という意味の「べし」が変化した「だべ」「するべ」のような言い回しは、さらに転じて「だっぺ」「すっぺ」と「ぺ」がつきやすい。
気になっていた発音について…