11.7度の水風呂 三宮のサウナ、整いながら感じる神戸っ子の原点

阪神・淡路大震災

西田有里
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 【兵庫】神戸・三宮の繁華街にある「神戸サウナ&スパ」の男性フロアの露天水風呂は、少し低めの温度設定が好評だ。サウナでほてった体を冷やすこの水風呂、温度は「11・7度」。そこには、ある思いが込められている。

 1995年1月17日。54年の開業以来、神戸で人々の疲れを癒やしてきた神戸サウナは全壊した。傾いた旧施設が取り壊された後、97年4月に完成したのが現在の施設。「11・7度」は、阪神・淡路大震災発生の日付が元になっている。

 以前は、全国の水風呂の平均的な温度である16度だった。

 水風呂の良さは「サウナと交互に入ることで血流が良くなること」と総支配人の津村浩彦(ひろひこ)さん(60)は話す。中でも冷たい水風呂はマニアに人気で、温度が1桁台のものは「シングル」、「グルシン」と呼ばれて親しまれているという。

 2年前、水風呂の温度を下げようと議論が始まった。10人弱が集まった会議で「震災の『1・17』に合わせて、11・7度にしようよ」と提案したのは、神戸サウナ&スパ社長の米田篤史さん(52)だ。

 「震災で全てを失い、建て替えた神戸サウナ&スパには、震災の記憶と結びつくものがないんです。そんな中でふと思いついた」と米田さんは振り返る。社員たちはうなずき、全会一致で決定。温度を変えたのは偶然にも、震災から25年が経つ2020年の1月だった。

 水風呂には、震災についての説明は書かれていない。ただ、「訪れた人たちに温度設定に隠された意味をいつでも話せるよう、スタッフには説明している」と米田さん。実際、総支配人の津村さんは、訪れた人に「どうして11・7度なの」と声をかけられることがあるといい、そのたびにこの街を襲った震災のことを説明してきた。

 震災は「神戸っ子の原点」だと米田さんは話す。あのとき応援してもらい、助け合ったから今の神戸、そして神戸サウナ&スパがある。「サウナで整いながら、その原点を感じてもらえたら」

 今日も、サウナを訪れた人々は、思いが隠された水風呂にざぶんとつかる。(西田有里)

1.17 再現/阪神・淡路大震災

1.17 再現/阪神・淡路大震災

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