「文化財の宝庫」保存のあゆみたどる 明日香法40年記念誌刊行

清水謙司
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 奈良県明日香村の歴史的風土を守ることなどを目的とした「明日香法」が制定されて40年を超え、村は記念誌を作った。写真を多く使い、法が制定された経緯や価値を伝えている。世界遺産登録をめざす「日本のこころのふるさと」への関心が深まる一冊になった。

 明日香村は古都保存法に基づき、京都市奈良市などとともに「古都」に指定されていた。1980年に制定された明日香法では、村の歴史的風土を保存することだけではなく、村の人たちの暮らしの安定や向上が明記されていることが特徴だ。

 記念誌(A4判)は、こうした明日香法の意義を分かりやすく説いた。最初に村内各地の昔と今の姿を見比べることができる写真の数々を載せた。甘樫丘から見た飛鳥坐神社方面や川原寺付近、集落などを紹介し、景観を保ちながら伸びゆく村の姿が伝わる。

 40年のあゆみは、豊富な写真つきの見やすい年表で示した。古都保存法施行の66年から、県が「飛鳥・藤原の宮都とその関連資産群」の世界遺産登録に必要な推薦書素案を文化庁に再提出した昨年3月までの動きをたどることができる。佐藤栄作首相(当時)が70年に村を視察し、住民の生活も考えた保存策の実施に言及したエピソードや高松塚古墳壁画の発見(72年)なども盛り込まれている。

 法制定に貢献した各界の偉人も紹介した。飛鳥保存の必要性を訴えた「声の直訴状」を佐藤首相に送った漢方医の故・御井敬三氏▽御井氏の声を首相に届けることを提案した実業家の故・松下幸之助氏▽高松塚古墳などの調査を指揮した橿原考古学研究所初代所長で関西大名誉教授の故・末永雅雄氏らを取り上げた。

 「これからの明日香村に期待すること」をテーマにした鼎談(ていだん)も収めた。その中で木下正史・東京学芸大名誉教授(考古学)は「明日香法が大きなきっかけとなり、本格的な調査を重ねる中で、遺跡の中身や価値がわかるようになり、世界遺産登録に名乗りをあげることができるという状況になった」と指摘している。

 記念誌は村内全戸に配った。一般配布はしていないが、村の公式ホームページで掲載している。森川裕一村長は、「まず昔と今の写真を見てください。40年間で少しずつ変化はしているが、違和感のない田んぼの風景があり、営みを続けながら新しい歴史的風土をつくっている。それが明日香法の本当の価値」と言う。(清水謙司)