目の前のモノが欲しい…窃盗症の78歳女に弁護人が与えた更生の秘策

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新屋絵理
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 お金はあるのに衝動的に盗みたくなってしまう――。そんな「窃盗症(クレプトマニア)」の診断を受けた被告の女(78)が、執行猶予期間中に万引きをしたとして再び逮捕された。今度は実刑が有力視されるなか、「刑務所でなく社会で更生させたい」と訴えた弁護人がとった方法から異例の判決が下された。

 起訴状や冒頭陳述によると、被告は2021年3月、東京都内の園芸店で、ピンク色のバラと黄色いデンドロビュームの鉢植え二つ(計約2300円相当)を盗んだとして、窃盗の罪に問われた。

 初公判で罪を認めた被告は、3年前にも万引きで懲役1年執行猶予3年の有罪判決を受け、その際に「2度としません」と述べていた。検察官や弁護人は過去の事件をふまえ、被告にたずねた。

 検察官「執行猶予の意味の説明は、(3年前の判決時に)受けましたね」

 被告「十分頭に入っていました」

 刑法の規定で、被告は執行猶予中の3年間を罪を犯さず過ごせば刑務所に入らなくて済む。だが、この期間に新たに犯罪をすると、原則として前回の「懲役1年」と、新たな罪による量刑を合わせた刑罰を受けなければならない。

 弁護人「盗めば逮捕されるのもわかっていましたよね」

 被告「それを考えたら怖くてできない。どうにかして(盗みたい気持ちを)抑えられれば社会に反することをしなくて済むし、自分も苦しまずに済む……でも、できなかった」

「人に言えなくて、寂しくて……」 きっかけは夫の暴力

 どうして窃盗を繰り返すようになったのか。被告が泣きながら明かした「きっかけ」は、夫の暴力だった。

 弁護人「初めて万引きをした…

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きょうも傍聴席にいます。

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