ロボットでいれる特別な一杯 一度は諦めたバリスタ、見つけた次の夢

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佐藤瑞季
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大きなバリスタロボの肩に乗る小さなロボットは藤田美佳子さんの分身。感情表現も思いのままだ
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 休日の昼下がり、東京・日本橋にあるカフェはカップルや親子連れでにぎわっていた。

 店内の奥まったスペース。

 コーヒーをいれるのは、ロボットだ。

 「こんにちは。テレバリスタのパイロット、藤田美佳子です」

 ロボットを操る藤田さんは、約270キロ離れた愛知県内の自宅にいる。50歳。難病で上半身はほとんど動かすことができず、少し動かせる指先で、パソコンのマウスを操る。

【動画】入場からあいさつまで=小林一茂、大波綾、佐藤瑞季撮影、藤田美佳子さん提供

 一度はあきらめたバリスタ。

 「こうして働けていること、お客さんに喜んでもらえていることが、本当に幸せです」

 三重県鈴鹿市出身。短大の保育科を卒業後、地元で銀行員になった。

 2003年、32歳のときに長女を出産。その数カ月後、夫の転勤で愛知県に引っ越した。全く知らない土地での生活は慣れず、さみしさを感じることも多かった。

 「自分のように、居場所のないお母さんって多いんじゃないかな」

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約13年前、保育士の資格をいかして働く藤田美佳子さん=藤田さん提供

 気軽に集える場所をつくりたい。保育士の資格を持ち、親子教室で働いた経験もある。親子でくつろげるカフェができないだろうか。

 そんなことを考えていたころ、大手カフェで働いていたママ友に、一緒にパートしないかと誘われた。

 もともと、コーヒーはたまに飲む程度だった。働くうち、その奥深さにはまった。

 同じ産地でも、焙煎(ばいせん)方法など「豆が旅してきた過程」によって味が変わる。

 自宅でも毎日コーヒーをいれ、微妙な味の違いを楽しむようになった。

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約7年前、バリスタをしていたころの藤田美佳子さん=藤田さん提供

容器を持つ手が震えた

 カフェで働き始めて4年ほどたった14年ごろ、体の不調を感じ始めた。

 髪がうまく結べず、重いものが持ちづらい。

 バリスタの全国大会をめざすようになっていた15年夏の地区大会。ミルクを泡立てる際、容器を持つ手が震えた。ラテをつくる機械の硬いボタンが押せず、審査員に押してもらうと、減点された。全国大会には進めなかった。

 しだいに、手だけでなく、肩にも違和感を感じ始めた。

 もしかして――。

 亡くなった父親は、筋萎縮性…

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