「もうゴミではない」 殺処分された犬猫の骨、絵の具にして描く命

上月英興
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 殺処分された猫や犬の遺骨を絵の具にした絵画が、オンラインで展示されている。手がけたのは東北芸術工科大(山形市)の学生たち。そのまま捨てられ、忘れ去られるだけの存在となった命の痕跡と、もう一度向き合ってもらおうという試みだ。

 遺骨絵の具の絵画を公開しているのは、美術科日本画コース3年の学生5人。昨年10月下旬から学生プロジェクト「白の橋」という名の下で、サイト(https://shirono-hashi.com/別ウインドウで開きます)で展示会を開いている。

 発案したのは、代表の児玉妃世莉(ひより)さん(21)。白いキツネを「命あるように」描くことを追い求めるなかで、何もしなければ一般廃棄物として捨てられる犬猫の骨に着目した。

 昨年6月、東北地方の愛護センターから少し譲り受け、91センチ四方の板に1カ月ほどかけて「一番美しいものを」と描いた。アイボリーに近い色のキツネ。「忘れられるなら、存在しないことになる。誰も知らずに終わる命を、人間の前にアートという姿で立つ場所を与えたい」と思うようになった。

 学外展覧会を企画する授業で「白の橋」プロジェクトを提案。「日本画を描く私たちにとって焼却後の骨はゴミではない」とアピールし、企画の一つに選ばれた。賛同した美術科の1~3年生約20人が自由なテーマで制作し、合わせて出品することになった。

 プロジェクトとして絵の具作りに取り組んだのは同8月。センターの施設には、遺骨を入れた30キロほどの紙袋がずらり。引き取り手もなく、殺処分されたり死んだりした犬猫たちだ。

 老化した骨、がんで黒ずんだ骨、誤飲した釘……。持ち帰った袋の中には、いくつもの命の痕が見てとれた。異物は取り除き、骨を手や棒で砕く。水を加えてふるいに掛ける。新聞紙上で乾燥させる。粒の粗さによって質感の異なる3種類の絵の具ができた。

 そもそも生き物由来の日本画の画材は珍しくない。白色の絵の具になる胡粉(ごふん)はカキなどの貝殻から、接着材となる膠(にかわ)は牛や鹿などの皮や骨からできている。

 実家で飼っていた鳥4羽を失った経験のある江守彩夏さん(21)は「命について考えたい」と参加。メンフクロウの瞳を描き、死んだ動物たちが訴えかけるまなざしを表現した。「岩絵の具と違い、『ふぁさっ』て感じで柔らかい。骨の色ってこんなにきれいなんだ」

 千葉惟真(いさな)さん(22)は、原始的で傲慢(ごうまん)な「アニマルとしての人」を描いた。「命との向き合い方について、人は自分勝手なんですよね。人間や気に入っている愛玩動物は特別視して」との思いだった。

 今回の展示のため、絵5枚などを作り上げた児玉さんは言う。「ビジネスとしては成り立たないし抵抗感もあって、結果的に骨は捨てられている。そこにギリギリ踏み込んでいけるのは、やっぱりアート。みんなが作品にしてくれた時点で骨はもうゴミではない」

 今月末まで、30作品余りを展示している。作品の販売もしていて、利益は災害救助犬などを育てる団体に寄付する。(上月英興)