沖縄の選挙イヤー幕開け 名護市長選、新基地「沈黙」か「阻止」か

沖縄・本土復帰50年

国吉美香、上地一姫、神沢和敬
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 沖縄県名護市長選が16日、告示された。政権与党に支えられて「辺野古」を語らぬ現職に対し、新顔は玉城デニー知事とともに移設反対を掲げる。秋の県知事選を頂点とする沖縄の選挙イヤーが始まった。

 「発展する名護市をつくるために、しっかりと予算を確保する。そういう道筋をつけていきたい」。16日朝、現職の渡具知武豊氏(60)は第一声をあげた。

 選挙戦で前面に掲げるのは、無償化させた学校給食費保育料など、この4年の実績だ。

 主な財源は、米軍基地の受け入れに協力した自治体に国から払われる「米軍再編交付金」だ。

 「普天間飛行場の危険性を除くには、辺野古が唯一の解決策」という自公政権の姿勢への賛否を渡具知氏は語らず、問われれば「(国と県の裁判の)推移を見守る」と繰り返してきた。その間に辺野古では土砂投入が始まり、沿岸部南側の陸地化は終わった。市長の「沈黙」で、国は円滑に工事を進められ、市には年約15億円が流れてくる。「ウィンウィン」の関係だ。

 辺野古の争点化回避で、沖縄の自公は4年前の市長選を制し、昨年の衆院選でも、名護市を含む沖縄3区で移設反対を掲げた前職を自民新顔が破った。今回も同じ戦略だ。

 渡具知陣営の一人は「米軍基地に賛成する県民はほとんどいないだろう。しかし市民は、辺野古の工事は止まらないと感じている」。そうした中で「生活に身近な政策で共感を得ること」(自民党幹部)のほうが、有権者の心をつかめると踏んでいる。

 想定外だったのは、新型コロナの感染拡大だ。知名度の高さを期待していた自民党の河野太郎氏の応援演説は中止になり、政権幹部らの来県も見通せない。陣営関係者は「地元の政治家の自力が試される」と語る。

 一方、新顔の岸本洋平氏(49)の陣営は、辺野古への「新基地建設阻止」を強く打ち出す。玉城デニー知事と並んで第一声のマイクを持った岸本氏は「ここで市政を変えて、新基地建設を止める」と語った。

 実際に昨年11月以降、軟弱地盤のある区域は大半の工事が進められていない。知事が「最後の切り札」を出し、国の設計変更申請を不承認としたからだ。

 沖縄は今年、名護市長選を皮切りに、参院選宜野湾市長選などが次々ある。天王山は秋の知事選だ。岸本陣営を支える県政与党や玉城知事にとって負けるわけにいかない。だが知事を支える超党派の政治勢力「オール沖縄」は、保守や経済人の離脱が相次ぎ、弱体化が指摘されている。

 「不承認」で知事の求心力を高めて選挙イヤーの初戦を勝ち、今後の勢いをつくる。市長選には、そんな意味も込められている。

 岸本陣営の市議は「政府が態度を見直すとは思えないが、工事を認めないという意思を地元から後押しし、世論に訴えるしかない」と語る。

 玉城知事も、この日の応援で「計画通りに進まない工事を、政府がごりおししている。未来のために、声をあげなければならない」と力を込めた。

 米軍由来とみられる新型コロナの感染拡大で、集会などを控えたため、陣営は「市民と対面できる機会がなく、感触がつかめない」とこぼす。ただ、水際対策に国内法が適用されないという日米地位協定の「穴」も浮き彫りとなった。「市民は基地被害を改めて実感している。辺野古を考える機運を高めていくときだ」と陣営幹部は意気込む。(国吉美香、上地一姫、神沢和敬

2022年の沖縄の主な日程

1月23日 名護市長選投開票

2月27日 石垣市長選投開票

4月24日 沖縄市長選投開票

5月15日 本土復帰50年

6月23日 慰霊の日

夏 参院選

9月29日 知事、宜野湾市長の任期満了

11月15日 那覇市長の任期満了

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    林尚行
    (朝日新聞政治部長=政治、経済、政策)
    2022年1月17日9時30分 投稿

    【視点】沖縄の「選挙イヤー」の幕開けです。人口約6万4千人の地方自治体の首長選が注目されるのは、米軍基地問題に翻弄される沖縄の象徴であり、秋に予定される沖縄県知事選に向けた一連の選挙の最初だからです。では、何が問われるのでしょうか。 注目自治