「地震もないのに津波?」 奄美通信員も避難…家族3人で車中泊

奄美通信員・神田和明 奥村智司
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 遠く離れた海洋の火山噴火による津波警報が出された鹿児島県の奄美群島。「津波」が発生するならばいつなのか、いつまで待てば戻れるのか。多くの住民と共に未明に避難した奄美市の本紙通信員が、不安と焦りの中で過ごした一夜を振り返った。

 16日に日付が変わってすぐ、市の防災無線からサイレンが鳴り響き、スマートフォンを手に取ると「津波警報」とあった。「地震もないのに津波?」。半日前に南太平洋で発生した噴火とすぐに結びつかず、不思議な思いにとらわれた。

 自宅から海まで100メートルもない。午前0時半過ぎ、着の身着のままで妻と車に乗り込んだ。アルバイトを終えたばかりの次男を市街地で拾い、高台を目指した。

 高台への入り口の「ループ橋」に差し掛かると、避難者の車で道が混み出した。少し上っては止まる繰り返しに焦りが募る。「家は大丈夫かな」「小湊で1・2メートルだって」。妻と次男がつぶやく。「みんな同じように不安なんだ。落ち着け」と自分に言い聞かせた。

 ループ橋を渡りきったところでストップ。約1時間、全く動かない。前も後ろも避難者の車列が続く。その間、ラジオから津波の情報が繰り返し流されるが、警報解除の見込みははっきりしない。「長丁場になる」と覚悟した。

 午前3時過ぎ、目的地の高台に行くのはあきらめ、坂の途中で丘の反対側に向かう。所々で路肩に車が止まっているが、スムーズに走れた。「海抜は大丈夫。このあたりで避難すればいい」と、広い路側帯に停車し、家族3人で車中泊することにした。

 気が立ってなかなか眠れない。状況が変わらないまま、時間だけ過ぎる。「新たな津波の観測はない。いつまで警報は続くんだ」。疲労がピークに達した午前7時半、ようやく警報が注意報に切り替わった。

 気象庁は「過去に例がない」「通常の津波とは異なる」と繰り返していた。今回の事態の分析には時間がかかりそうだ。一方で、備えのなかった自らへの反省が残った。避難グッズは普段からそろえ、すぐに持ち出せるようにしておくこと。教訓をかみしめながら家路を急いだ。(奄美通信員・神田和明)

10市町村で8万9千人に避難指示

 トンガ諸島の大規模噴火の影響で、鹿児島県内では奄美群島とトカラ列島に津波警報、ほかの沿岸部の全市町村に注意報が出されたが、16日午後2時までにすべて解除された。

 県のまとめ(同午後3時現在)によると、今回の潮位上昇による建物被害の報告はない。奄美市などの離島と日置市の10市町村で計8万9千人を対象に避難指示が出された。避難所に身を寄せたのは計約400人ほどだった一方で、車で高所に移動するなど屋外に退避した人が多かった。

 奄美市名瀬小湊で国内最大の1・2メートル、中種子町熊野と南大隅町大泊で0・7メートル、志布志港と枕崎市で0・6メートルの潮位の上昇が観測された。(奥村智司)