事件4日前に奏でたサックス、仲間の心に 犠牲の男性、前日も笑顔
比嘉太一、鈴木智之
年も押し迫った昨年12月13日。大阪府内のホテルで開かれた仲間うちの忘年会で、その男性はほおを膨らませ、趣味のサックスを披露していた。「ノリノリで。ほんまに笑顔が素敵な人でな。人を楽しませるのが得意やった」。知人の会社経営者は、スマートフォンに保存したその時の写真に目をやりながらつぶやいた。
男性は大阪府内に住む40代。4日後の12月17日、大阪市北区のクリニックで25人が犠牲になった放火殺人事件で亡くなった。
保険業界に身を置く傍ら、地域の経営者や自営業者らが集う勉強会に参加していた。忘年会は、そのメンバーらで開かれた。
目を細め、「動物園に行きたいって」
男性が勉強会に加わったのは、1年以上前のこと。週1回、メンバーらが自身の経営哲学や生き方について考えを披露したり、感想を述べ合ったりする早朝セミナーでは率先して司会を担い、場を盛り上げた。
ITの分野にも詳しく、コロナ禍で「リアル開催」が難しくなったときには、オンラインでメンバーらがコミュニケーションを図れるよう環境を整えるなど、積極的に運営に関わっていた。これからも会を引っ張ってくれる人材だと、メンバーらは期待を寄せていた。
妻と小学生ぐらいの子がいた…