本名を奪い、堕胎や断種まで強いた 忘れさせないため、自ら伝える

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高木智子
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現場へ! 「隔離」を伝える①

 隔離のための療養所は、かつて森の中にあった。熊本市ベッドタウン化が進み、「菊池恵楓園(きくちけいふうえん)」の周りには住宅地が迫る。

 昨年末、熊本市から熊本電鉄に乗り、終着駅の御代志(みよし)(熊本県合志(こうし)市)で降りた。駅前には、クリニックやスーパーが入るビルが建てられようとしていた。恵楓園はその隣にあり、リニューアル中の歴史資料館が見えた。

 「私たちがこの世から去っても、伝えていく。忘れさせない。そんな展示ができたよ」

 こう語るのは、ハンセン病で8歳の時に隔離された太田明(78)だ。いまも本名を名乗れず、ふるさとに戻れなかった。約160人を束ねる自治会の副会長。「みんな、ここで人生を終える覚悟を決めていると思う」と言った。

 太田がリニューアルを打ち出し、5月に開館する資料館を案内してもらった。正面に「あなたはわたし」と掲げ、「病気はかかる人を選ばない。あなたも同じ人生を歩んだかも」と呼びかける。

 国は全国13の国立療養所に患者を隔離した。恵楓園は東京ドーム13個分の広さ。本名を奪い、感染力が弱くても、治っても、一生閉じ込め、堕胎や断種まで強いる残酷な歴史を刻んだ。資料館に、大きな文字でこう書かれていた。

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