避難の方法、防寒、感染対策…冬の深夜に出た津波警報、課題浮き彫り

宮脇稜平 西晃奈
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 トンガ諸島の海底火山噴火に伴う潮位の上昇で、16日未明に津波警報が出された岩手県の沿岸では、避難の方法や避難所での防寒対策をめぐり、課題が浮き彫りになった。「冬の深夜」は、国が昨年12月に公表した日本海溝・千島海溝地震津波の被害想定で最も被害が大きくなるとした条件で、対策が急がれる。

 県内で最も高い1・1メートルの潮位の上昇を観測した久慈市は、16日午前0時15分に津波注意報が発表されたことを受け、沿岸の住民に避難指示を出した。

 その後、午前2時54分に注意報が警報に引き上げられたのに伴い、1459世帯3444人に対し、改めて避難指示を出した。

 避難の呼びかけは、防災行政無線やメールで行ったが、開設した7カ所の避難所に避難したのは、34世帯48人にとどまった。

 ただ今回、消防団員が避難所の駐車場や高台にある公園を見回ったところ、止まっていた車の台数から400~500人程度が避難したとみている。

 実際、中心部に近い高台にある市総合福祉センターでは、1階のロビーや2階の和室に避難したのが27世帯33人だったのに対し、駐車場は約150台の車で埋まった。

 車による避難が多かったことについて、センターを管理する市社会福祉協議会の夏井正悟事務局長は「私的な空間を求める人が多いうえ、寒さで高台への徒歩での避難をためらったのではないか」とみる。

 今回の避難に伴って大きな渋滞は起きなかったというが、市は「渋滞で身動きが取れず、津波にのまれる危険性がある」として、避難は原則徒歩でするよう求めている。

 さらに、避難者がそのまま車中泊をすると、人数の把握が難しくなるうえ、水や非常食などの支援物資を配りにくくなるという。

 夏井さんは「対応が難しい」と頭を悩ませる。(宮脇稜平)

結果として「密」状態に…

 宮古市では、新型コロナウイルス感染対策と防寒対策との両立が課題になった。

 市は指定している60カ所の避難所のほとんどに、「コロナセット」として、非接触型の体温計やアルコール消毒液、マスク、手袋を用意していた。

 職員は、住民が避難所に入る際に検温と消毒をしたうえ、窓や扉を開けて換気をよくした。発熱している避難者が来た場合に備え、隔離用のパーティションも準備していた。

 最大の避難所になったのは市立河南中学校で、約150人が集まった。

 密を避けるため、体育館を開放することを検討したが、広いうえに天井が高くて暖まりにくいため、一回り小さく畳張りの武道場を使った。

 毛布は全員に行き渡ったものの、灯油の備蓄量から、使われたストーブは最も多いときでも4台で、多くの人がストーブを囲み、結果として「密」状態になった。

 市は災害が冬に起きた場合に備え、非常用の備品として、ハザードマップに防寒具を記載したり、市の広報誌には玄関先にコートや手袋を置いておくよう呼びかけたりしている。

 市の芳賀直樹危機管理監は「毛布やストーブは足りないと思うが、倉庫のスペースを考えると増やすのは難しい。寒さ対策はできるだけ個人の装備で何とかしてほしい」と話した。(西晃奈)