観察対象になって考えた ゼロコロナ策にも通底する中国的民主

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北京=林望
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 ケチのつき始めは、1本の電話だった。

 昨年11月の朝、スマホが鳴り、見覚えのない番号が表示された。いぶかりながら電話を取ると、女性の声で「警察です。名前と住所を確認させてください」と告げられた。

 やはり来たか――。前日、上海市当局が会見し、市内の浦東新区で新型コロナウイルスの感染が確認されたと発表していた。直前の週末、私は出張で浦東新区のホテルに1泊した。その段階で感染者は報告されていなかったが、感染確認から時間をさかのぼる形で同区にいた人間が調べあげられ、健康観察処分の対象になったのだ。ホテルは感染の出た地区から5キロ以上離れていたのだが……。

 我々外国人も含め、中国に住む人は「健康コード」と呼ばれるアプリをダウンロードし、身分証情報などを登録している。お年寄りなどスマホを持たない人もいるので強制ではないが、これがないと公共交通機関は使えず、オフィスビルや店舗にも入れないので、現役世代にとっては実質的な義務と言っていい。

 私は警察に聞かれるまま、名前や住所、上海から戻った日時などを伝えた。相手の言葉遣いは丁寧だったが「あなたの使ったホテルや飛行機で感染者が出たらすぐに隔離します」と告げられた。

 夕方には共産党の末端組織でもある自治組織から電話があり、PCR検査を受けて結果を報告すること、毎日、朝と夕に体温を報告することを命じられた。さらに2週間は不要不急の外出はしないこと、人と一緒に食事しないことを約束する誓約書も送られてきた。

 翌日、指定された医療機関に…

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