がんにも「ぜったいにかてる」 恐竜が好きだった9歳が残した贈り物
千葉県銚子市の加瀬武虎くんは、4、5歳のころから恐竜が大好きな子どもだった。
恐竜の絵を描いたり、図鑑を見たり。特に好きだったのは、ティラノサウルスだ。
みんなから「虎」と呼ばれ、明るくよく笑う子どもだった。
小学3年生になった武虎くんが、母親の慶子さん(44)に吐き気を訴えたのは、2019年6月23日のことだった。
「気持ち悪い」
しばらく様子を見ていたが収まらず、「目の奥も痛い」と言うようになった。
2日前、千葉市にある科学館へバス遠足に行った時は元気だったのに。
不安になってインターネットを検索すると、「脳腫瘍(のうしゅよう)」の文字が出てきた。
かかりつけ医で頭のMRI画像を撮ると、腫瘍が写っていた。
紹介された地域の拠点病院に入院し、7月には千葉大学病院に移った。
抗がん剤と放射線による治療を受けた。
「ひとつずつクリアしていこう」
歩く元気もなくなっていたが、リハビリにも励み、一時は病棟の中を走り回るほどになった。
やはり小児がんで入院していた5歳年下の「大ちゃん」を、弟のようにかわいがっていた。
毎日のように恐竜の絵を描いては、メッセージを添えて贈った。
「ぜったいにかてる!!」
「ひとつずつクリアしていこう」
「はなれていてもこころはそばにいるよ」
大ちゃんはこの春から、小学1年生になる。
けれど武虎くんは、検査で脊髄(せきずい)や小脳などへの転移が見つかった。
20年1月に一度退院。再び治療で一時入院。4月に退院したが、食欲がなくなり、気分の悪さを訴えて、5月に慶子さんの車で地元の病院へ。また千葉大学病院に戻った。
「恐竜が大好きな男の子が再入院してきた。でも、長くない」
武虎くんの話が、千葉市の認定NPO法人「ミルフィーユ小児がんフロンティアーズ」の理事長、井上富美子さん(75)の耳に入ってきた。
小児がんの子どもと家族を支援する団体だ。
「何かできないだろうか」
東京・上野の国立科学博物館で「恐竜博士」として知られる真鍋真副館長(62)を、小児がん経験者の母親から紹介してもらった。
真鍋さんは武虎くんに、恐竜の絵本を贈った。
テレビ電話で、話もした。
武虎くんは目をきらきらさせて喜んだ。
真鍋さんも「ことばのキャッチボールができる子だな」と思った。
小児病棟と博物館をつないで
恐竜が病気に打ち勝つ励みに…
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