アルツハイマー型認知症の新薬の開発が進み、早い段階で認知症と診断される人が、これから増えると見込まれている。しかし、現状では適切な支援や診断を受けられない人も多い。認知症になっても希望を持って生きることを後押しする居場所づくりがさらに重要になっている。(姫野直行、編集委員・辻外記子)
1972年に入居が始まった東京都板橋区の高島平団地は、かつて「東洋一のマンモス団地」と呼ばれたが、高齢化が進んでいる。
団地の1階に、店舗だったスペースを利用した「高島平ココからステーション」がある。2016年に東京都健康長寿医療センターが開設した。
認知症の診断を受けても
認知症がある人を中心に、だれでも無料で利用でき、医師に相談もできる。引きこもりがちだったという大村佳津江さん(78)は「ここでお話しすることで、物忘れしにくくなった気がする」と話す。
認知症の診断を受けている女性(87)は、週に3日はステーションに通い、一人暮らしを続けている。物忘れが進み、お金の管理が難しくなったため、成年後見人がついた。買い物に出かけ、パニックになるような場合はスタッフが付き添う。女性は「ここに来れば安心。世話にならなければ、死んでいたかもしれない。施設に入って自由がなくなるのはつらい」と話す。地域包括支援センターのサポートも受け、デイサービスにも通っている。
適切な支援を受けられる例ばかりではない。70代の男性はかつてステーションを訪れて、ボロボロと涙を流した。認知症と診断されたものの、軽いからと治療もケアも受けられなかった。認知症の当事者やスタッフに、不安な思いをじっくり聞いてもらって安心したのだという。
「社会的に孤立する人が多い」
東京都健康長寿医療センター…