第2回魔のショートカット 連続事故の737MAXはこうして生まれた

有料会員記事

シカゴ=江渕崇
[PR]

 ボーイングの新型旅客機737MAXは、わずか5カ月の間に2度の墜落事故を起こした。アメリカの航空当局は最初の事故後に改めてリスクを評価し、「何も手を打たなければ2、3年ごとに墜落し、最大15件の事故で2900人が死亡する恐れがある」との数字をひそかにはじいていた。

 それほど危険な飛行機が、どうして世に送り出されたのか。今から10年あまり前。時間と投資を惜しんだボーイング経営陣の決断に、その原点があった。

 「ボーイングとエアバスに、史上最大規模の航空機発注」

 2011年7月20日付のプレスリリースが、いまもウェブ上に残っている。

 米アメリカン航空の当時の親会社が、13~22年に小型機計460機を調達するという発表だった。この日のニュースは、ボーイングの小型機「737」シリーズだけでなく、欧州エアバスのライバル機「A320」シリーズも買うと表明したことだった。アメリカン航空は当時、もっぱらボーイング機だけを運航するボーイングの上顧客。米国最大手の航空会社の一角が、エアバスに切り崩された瞬間と受け止められた。

エアバスへの対抗策

 ただ、それでもボーイング側は、737を引き続き買ってもらえることに安堵(あんど)していた。

 それにはわけがある。

 エアバスが10年に発表した小型機「A320neo」は、米ゼネラル・エレクトリック(GE)と仏サフランによる合弁メーカー「CFMインターナショナル」が開発した最新の大型エンジンを積んでいた。前世代機より燃料消費を15%も減らせる燃費性能の高さから、当時存在感を増していた格安航空会社などがこぞって注文した。

 アメリカン航空も、次世代の主力小型機としてA320neoだけを大量購入する方向に傾いていた。その動きを察知したボーイング社内に動揺が走った。ベトナム戦争があった1960年代に初代が飛んだ世界的ベストセラー、737シリーズはすでに3世代目「NG(ネクスト・ジェネレーション)」に進化していた。ただ、燃費性能などで後発のA320neoに大きく水をあけられていた。

 ボーイング社内では当時、まったく新型の小型機を白紙から開発するプロジェクトが検討されていた。しかし、それでは時間も費用もかかり、アメリカン航空からの小型機受注をエアバスに丸ごと奪われかねない。

 ボーイング経営陣は考えを変えた。手元にある737NGに改良を施したうえで、A320neoと同じCFM製大型エンジンを据え付ければ、手っ取り早くエアバスに対抗できる――。

 こうして生まれたのが737シリーズの4世代目、のちに「737MAX」と名付けられるモデルだった。このショートカットが、取り返しのつかない禍根を残す。

 急ごしらえした737MAXは、構造上の問題を抱えていたのだ。

「問題の根源を残したまま……」

 元の機体の設計が古く、燃費…

この記事は有料会員記事です。残り1347文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

【7/11〆切】スタンダードコース(月額1,980円)が今なら2カ月間無料!詳しくはこちら