島に積もる火山灰、壊滅的状況も トンガ救援、専門家「水と医療を」
南太平洋のトンガ諸島で起きた海底火山の大規模噴火で、救援活動が難航している。島嶼(とうしょ)部での火山災害の救援の難しさは何か。国連人道問題調整事務所(OCHA)やインドネシアの防災法整備に関わった専門家プジ・プジオノ氏に聞いた。インドネシアは国内に120超の活火山を抱える火山大国だ。プジオノ氏は2006年、インドネシアのジャワ島にあるムラピ火山の噴火の際、現地入りして支援活動にあたった経験がある。
――火山災害が他の災害と違うのはどのような点ですか?
溶岩や火砕流、火山灰など、災害に連動する要素が多いところです。支援に当たる際は火山災害の対応経験や知識が必要です。
火山灰を吸えば、二次的な健康被害につながる可能性があります。空中の火山灰については、飛行機の航行の妨げになる可能性があります。
――今回のトンガ諸島の海底火山の噴火をどのように見ていますか?
広く公開されている衛星画像を見るだけでも、すさまじい爆発が起きていることがよく分かります。画像をよく見ると火山灰が垂直に上向きに噴出しているのがよく分かります。このため、津波の影響はもちろんですが、トンガの国全体に火山灰による深刻な被害が出ていると思います。
――今回のトンガ諸島での噴火で一番懸念していることは何ですか?
飲料水の確保がきちんとできているのかどうか心配です。飲み水の確保に影響が出るのも火山災害の特徴です。2006年のムラピ山の際も同じ問題が起きていました。
トンガは島国です。インドネシアも島国ですが、島の大きさが異なるので、火山の噴火が起こっても島全体が被害に遭うということはなく、被災していない別の場所から飲み水を調達することができます。
ですが、トンガの場合は島の中で調達するしかなく、通常時から飲み水の調達は比較的難しい状況にあると思います。降り積もった灰で水源が汚染されている可能性があります。灰を含むと水は粘度を増して、シロップのようにどろどろになります。火山灰の成分を含む雨と同様に、飲み水には不向きです。
地理的に見て、トンガは潜在的な脆弱(ぜいじゃく)性を抱える国だと思います。周囲を海に囲まれ、普段から飛行機を乗り継ぎ、ようやくたどりつける位置にある。すなわち、今回のような災害の際、支援物資を届けることの難しさも増します。こうした地理的な要因から、一度災害が起こると、壊滅的な状況となりやすい。
島に最も早く支援を届ける手段は飛行機ですが、火山災害の場合、火山灰の影響があります。これまでの経験から、思うように支援のための飛行機を飛ばせないことが多かったように思います。
――どのような支援が必要でしょうか?
短期的には、救助のほか、水や医療支援などが考えられます。これらの支援は急がなければならない。トンガの復興のためには、地理的にも経済的にも、近隣諸国による長期にわたる支援が求められています。(ジャカルタ=半田尚子)
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