伝説的な面打の作と伝わる能面 「翁」の祝福授ける神

学芸員 茨木恵美
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 【滋賀】主に正月などの祝い事の際に演じられる能の演目「翁(おきな)」において、老人の姿をした神である主役の翁が用いる面(おもて)(能面)です。

 「翁」は、能が成立する以前の古い芸能を受け継いだ、能の根本に位置づけられる演目。ストーリー性はなく、2人の老体(ろうたい)の神、翁と三番叟(さんばそう)が舞(まい)を舞い、天下泰平(てんかたいへい)・国土安穏(こくどあんのん)・五穀豊穣(ごこくほうじょう)を祈念し世を祝福するという、儀式的要素の強いものです。

 白色尉(はくしきじょう)は、古くから、面そのものが神聖な神の面であると考えられてきました。その造形もほかとは異なり、顎(あご)は下部を切り離して飾り紐(ひも)で結ぶ切顎(きりあご)、眉(まゆ)はボウボウ眉と呼ばれる白い飾り眉とし、目はへの字形にくりぬきます。ほかの面には見られない、柔和な笑みが特徴です。

 この面は、室町時代にさかのぼる貴重な古面(こめん)です。面の裏には、後に江戸時代の面打(めんうち)(能面の制作者)が記した「日光(にっこう)作」との極書(きわめがき)(鑑定の証明書)があります。日光は室町時代の半ば伝説的な面打で、白色尉など「翁」で用いる面を得意としたとされます。端正な作りの優品で、大いなる祝福を授ける神にふさわしい、明るく聖性に満ちた面です。見る者を晴れやかな気分にさせてくれます。(学芸員 茨木恵美)

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 テーマ展「老いを言祝(ことほ)ぐ―能の世界から―」(2月2日[水]まで)で展示中。一部休室のため一般300円、小中学生150円。問い合わせは博物館(0749・22・6100)。