第6回ボーイングとGE、同時の苦境は偶然か 底流にあの名経営者のDNA

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シアトル=江渕崇
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 吸収合併したはずの同業マクドネル・ダグラス(MD)の元経営陣に主導権を握られ、ボーイングは株価至上主義へと染まっていった。利益をひねり出すために多用されたのが「アウトソーシング」(外注)だった。その実態を知るベテランのエンジニアが、取材に応じてくれるという。私はシアトルに飛んだ。

 ボーイング社員として1990年代、機体の制御システムなどを手がけたピーター・レミー。ボーイングを97年に退職し、同社に部品を供給するサプライヤーに転じた。その企業は、当時開発が進んでいたボーイングの中型機「787ドリームライナー」向けに、中核的な電子機器を納めることになっていた。

 レミーのチームはちょうどその時期、ボーイングのライバルである欧州エアバスからも、ほぼ同じ機器の開発を依頼されていた。「守秘義務があるので詳しくは話せない」と言いつつも、レミーはある逸話を明かしてくれた。

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ボーイングの元エンジニア、ピーター・レミー=2020年3月、米シアトル、江渕崇撮影

度を越した下請け任せの帰結

 機器をどう設計し、どんな性能・機能をもたせるのか。

 エアバスは細部にわたる説明を用意しており、レミーがもらった書類を積み重ねたら1メートル近い厚さがあった。

 一方、古巣のボーイングは「ウチの代わりにどんな機能と設計が必要かを考え、書類も整えてほしい」とレミーらに丸投げしてきた、という。

 しかも最重要機器の担当者としてボーイングがつけてきたのはたった1人だった。レミーが知る以前のボーイングなら、社員が20~40人はかかわっていたはずだという。

 「安全にかかわる責任やコストを、サプライヤーに押しつける。コストをケチるための、ボーイング経営陣による意図的な転換でした」

 結局、787型機は納入が当初予定から3年も遅れ、その結果コストも膨れあがった。就航後もリチウムイオン電池が発火するトラブルに見舞われ、日米などで相次ぎ運航停止に追い込まれた。度を越した下請け任せの帰結、とも評された。

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緊急着陸した全日空のボーイング787型機のバッテリー。機体前部のメインバッテリー(左)は真っ黒に炭化しているが、後部の補助バッテリーは正常だった=2013年1月、高松空港、運輸安全委員会提供

 2018、19年と続けざまに墜落したボーイングの小型機737MAXは、機体の姿勢を制御するシステムの誤作動が直接の事故原因だった。米ブルームバーグ通信の報道によると、737MAXの一部制御ソフトは、時給最低9ドル(約1千円)で働くインドの新卒プログラマーに外注されていたという。

「20世紀最高の経営者」

 ボーイングの企業文化を根底から変えてしまったMDの強いDNAは、いったいどこから来たのか。複数のボーイング関係者はその源流として、「20世紀最高の経営者」とも称される人物の名を挙げる。

 ジャック・ウェルチ…

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