アカデミー主演男優賞と大統領 黒人初の2人がたどった理想と現実

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 黒人俳優で初めて米アカデミー主演男優賞を獲得したシドニー・ポワチエさんが94歳で死去した。映画に詳しい立教大学アメリカ研究所所員の生井英考さんが、黒人初の大統領と対比しながら、人種問題で果たしてきた役割を論じた。

「いずれ大統領になるわ」

 先ごろ95歳を目前に亡くなった俳優シドニー・ポワチエの訃報(ふほう)を伝えるアメリカの報道で、おそらく最も多く言及されたのがバラク・オバマ元大統領だったろう。

 在任中、アメリカの民間人にとって最高の栄誉とされる大統領自由勲章を授与した縁もさることながら、かつてポワチエがスクリーンで演じた役柄と元大統領の個人的な存在感は、偶然にしてはできすぎなほど近しいものだったからである。

 代表作のひとつ「招かれざる客」で白人女性ジョーイとの結婚を望む黒人医師役のポワチエは、異人種間の婚姻への世間の風当たりを案じながらも、自分たちの子どもは「いずれ大統領になるわ」という朗らかなジョーイの希望の言葉を、義父になるはずの新聞社社長(スペンサー・トレイシー)に伝える。

 1961年生まれの元大統領は、この映画の公開された年に6歳。まさに映画の中の冗談まじりの願望がそのまま実現したかのように、四十余年後、オバマ大統領は誕生したのである。

 実際、ポワチエとオバマ、このふたりほど世代も立場も違うのに公的なイメージの点で共通した間柄も珍しいだろう。

映画の中でいつも“たったひとり”の

 どんな役であれつねに冷静沈着で、人種差別への怒りでも激情に流されることのないポワチエと、「黒人のアメリカも、白人のアメリカも、ラテン系のアメリカも、アジア系のアメリカも存在しない。あるのはアメリカ合衆国なのだ」と説いて、人種の壁を乗り越えることをアメリカの夢と描いたオバマ。

 しかし前者の態度は白人に都…

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