「腸に穴」障害者ら次々病院へ でも共有されなかった「虐待の疑い」

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藤牧幸一
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 「同じような事例が続いていると知っていれば、別の対応ができたかもしれない」

 愛知県東浦町の知的障害者施設で入所者が相次いでけがをした事件で、調査を担当した自治体職員はそう振り返る。

 入所者4人が病院を受診し、「虐待の疑いがある」と通報を受けた自治体もあったが、情報が共有されていなかった。

 入所者の家族会の関係者からは「事件の再発防止には自治体間の連携が欠かせない」との声も上がる。

 東浦町の「なないろの家」では2018年9月以降、40~80代の入所者4人が、腸に穴があくなどして病院を受診し、うち2人が亡くなった。

 元施設職員の男(47)が、50代男性(その後死亡)と80代男性の腹を蹴るなどした傷害罪で懲役2年4カ月の実刑が確定。一方、40代男性への傷害致死と別の50代男性への傷害容疑については、名古屋地検は不起訴とした。

 入所者の多くは意思疎通が難しいことに加え、監視カメラが未設置で暴行の目撃者がいないことなどから、立証が困難と判断したとみられる。

 なないろの家の運営法人によると、4人のうち2人は、19年6~8月に同じ病院に搬送された。

 厚生労働省の手引によると、入所者への虐待が疑われる場合、入所前の住所地の市町村が通報を受け、施設側に聞き取り調査などをし、虐待の事実を確認すれば都道府県に詳しい状況などを報告する。必要なら警察への通報などもする。

 だが、市町村が別の市町村とけが人の情報などを共有する仕組みはない。2人が入所前に住んでいた自治体はそれぞれ、東浦町を介して病院から「虐待の疑い」の通報を受けて調査した。

 担当職員は取材に、なないろの家で他にも同様のけが人が出ていることを知らなかったと説明。「情報があれば、『同じような事例が続くのはおかしい』と施設側に突っ込んで聞くなど、より強い疑いを持って対応できたのではないか」と話す。

 内臓のけがは自傷行為や病気などでも起きうるという。また、重度の知的障害があり、十分な聞き取りもできなかった。

 なないろの家の4人についてはいずれも、当時は虐待の認定に至らなかった。

記事後半では、職員のストレスや、施設内の監視カメラ設置の是非などについて、識者の見方を紹介します。

 自治体間の情報共有について…

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