国に220万円支払い命令 陸自パワハラ自殺めぐる訴訟 熊本地裁

大木理恵子
[PR]

 自殺した陸上自衛官の遺族が、教官の指導が自殺の原因だったとして、国と当時の教官2人に計約8100万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が19日、熊本地裁であった。中辻雄一朗裁判長は違法な指導があったと認め、国に計220万円の支払いを命じた。

 判決は一方、教官の指導は2日間のみで自殺の予見はできなかったとした。教官2人への請求については、公務員の職務上の行為だったとして退けた。

 判決後に会見した原告側の板井俊介弁護士は「死亡に対する責任を否定した判決。原告としてはその点を絶対に許すことができない」と話し、控訴する意向を示した。被告側の陸自西部方面総監部広報室は「判決内容を精査しているため、回答は差し控える。判決を受け止め、パワーハラスメントなど同種事案の再発防止に努めていく」とコメントした。

 自殺したのは陸上自衛隊西部方面隊に所属した男性陸士長(当時22)。2015年10月、陸曹に昇進するため教育隊に入隊し、約3カ月間教育を受けることになった。入隊から間もない同月7日に自殺。両親が19年7月に提訴していた。教官2人は既に停職の懲戒処分を受け、自殺は公務災害に認定されている。

 判決によると、男性教官の一人は15年10月6日夕、男性の胸ぐらをつかんだ。別の男性教官はそれを知りながら放置し、同日夜に男性に対し「お前のようなやつは殺してやりたいくらい」と発言した。

 判決はこれらの言動を「違法な指導」とし、この指導が「一つの要因として適応障害を発症し、自殺に至った」と認めた。その上で、国は安全配慮義務に違反したとして、慰謝料など計220万円を支払うよう命じた。

 男性の両親は「(判決は)被告から指導を受けたのが2日間だけで、1日のうちに短時間に行われたものだからという理由で、学生が自死してしまうことがわからなかったといいます。弱い立場の者を精神的に追い込んで追い詰めれば、当然、死んでしまうことはあり得ることを軽視した本日の判決は、とても受け入れられません」とのコメントを出した。(大木理恵子)