ワーケーションに活路、人口減の課題解決に 群馬・みなかみ町

中村瞬
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 温泉や豊かな自然に恵まれ、群馬県の内外から毎年、多くの観光客が訪れるみなかみ町。東京からのアクセスの良さといった強みも生かし、休暇を取りながら仕事をする「ワーケーション」の誘致に力を入れる。昨秋から、キヤノンマーケティングジャパン(東京)と連携した実証実験も開始。町の担当者は「関係人口を増やし、人口減に伴う町の課題解決につなげたい」と話す。(中村瞬)

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 実証実験は昨年10月から始まり、2月上旬には最終回となる3回目の滞在を予定している。同社の社員数人が毎回3泊4日の行程で計3回滞在し、町の課題を探りながらワーケーションの可能性を検討する。

 町は、観光庁の「『新たな旅のスタイル』促進事業」に県内で唯一選ばれた。この事業はワーケーションを念頭に、企業と地域が継続的な関係を築くためのマッチングを行い、効果の検証や制度の導入、受け入れ態勢の整備を進めることを目的としている。

 町は2017年から、町内のテレワークの拠点整備に力を入れてきた。町内には、民間が運営するものも含め五つの施設がある。

 幼稚園だった施設や古民家を改修したサテライトオフィスやコワーキングスペース(オフィスをもたない人が使える仕事場)のほか、昨年10月には町有の温泉施設だった建物をワーケーション施設として再整備し、サブスクリプション定額制)型の施設を開いた。いずれの施設も宿泊可能だ。

 移住や移転の希望者に向けた相談体制が充実しているのも、町の特徴だ。オンラインによる移住相談会は、県内で最初に始めた。移住に向けた視察やテレワーク施設の利用者を対象にしたレンタカー使用料の一部補助のほか、テレワークで働く人を念頭に置いた新幹線通勤費を最長3年間、最大で月3万円を上限に補助する制度もある。今後、都市部の企業の進出や体験研修を促すため、こうした情報の発信を進める。

 自身も移住したという担当者の町観光商工課の中山文弥(かざみ)さん(35)は「町の良い点も悪い点も知ってもらったうえで、町と関わってくれる人や企業を増やしたい」と話す。

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 町がワーケーション誘致やテレワーク拠点の整備に力を入れる目的は、関係人口(地域と継続的に関わりを持つ地域外の住民)を

増やすことと、地域産業の担い手不足解消にある。

 町の人口減少には歯止めがかかっていない。ピークだった1955年は3万5696人だったが、少子化や若者の都市部への流出などで減少が続いており、2021年末時点では1万7941人とピーク時の半分に減った。特に若年層の転出超過は深刻で、1990年から2010年のデータでみると、10代後半~20代前半の転出超過は、20年間で1・7倍に拡大した。

 今回の実証実験の特徴は、「町の課題解決」を目標としている点だ。ワーケーションを広めることで、町の「魅力」と「課題」の両面を知ってもらい、企業が課題解決に結びつく新規事業の創出につなげることをめざす。

 町は実証実験を通じ、独自のワーケーションモデルの構築につなげたい考えだ。1拠点のみを軸とした限定的なエリアでの滞在では地域との接点が限られるため、町全体の魅力や課題を伝えられない。コーディネーターを置いて町内の複数拠点を活用することで、町の多様な魅力やさまざまな地域課題に接触できる形を模索している。

 中山さんは「ワーケーション」へのイメージも、大企業の導入がなかなか進まない一因とみる。「ワーク(仕事)」と「バケーション(休暇)」を掛け合わせた造語だが、中山さんは「バケーションの面が強調されがち。ワーケーションは『ワーク+コミュニケーション』でもあるのでは」と語る。日常と違う環境で目的に取り組むことによって一体感が増し、意思疎通が円滑になる。「地域住民と直接触れ合うことで、解決すべき課題がより具体的に可視化される」と考えている。